青砥という男性の、やさしさゆえに踏み込めないもどかしさや、前に進めない感じも、すごく共感しました。青砥は、大人になって少しはスマートになっているかなと思ったら中学3年の頃からまったくもどかしさが変わらないので、めんどくさい人だなぁ、と。(笑)
「好き」という言葉も言えないし、次に会うタイミングも迷っている。あまり人のスペースにずかずか入っていかない。そうやって回り道をするところはもどかしいけれど、映画になったとき、素敵な要素の一つになったと思います。
青砥と僕の実年齢は、ほぼ同じ。50過ぎてから初恋の人と再び出会うのは、どんな感じなんだろう。その瞬間、中学時代に戻る感覚もあるだろうし、同時に、それぞれ大人になって会わなかった空白の時間にさまざまな人生を経験しているわけです。
自分に置き換えてみると確かに、たまに宮崎の実家に戻ったとき、ふと昔の感覚に戻ることがあります。ただ僕の場合、宮崎弁を手放してしまったので、そこは大きい。
上京後、それまでの自分の痕跡をなるべく消すことが俳優修業でもあったので。だから宮崎に戻っても、僕は別の土地からお邪魔する「まれびと」というか、お客さんになってしまう。ちょっぴり寂しいけれど、それは仕方のないことだと思っています。