現場では、とても楽しく和気あいあいと撮影が進みました。クランクインは子役の二人が演じる中学時代のシーンで、それをあらかじめ見ていたことで、すんなり50代の二人になれた気がします。
須藤を演じた井川遥さんとは、これまで何度か仕事でご一緒していますが、今まではわりと物静かで色っぽい役が多かった。でも、実際の井川さんはひょうきんな部分があって、元気に飛び跳ねるような生命力あふれる方です。須藤はそうしたイキイキとした面を持ちつつ、それをぐっと内に抑えているイメージだったので、まさにぴったりだなと感じました。
役作りに関して二人で話すことはあまりなく、井川さんと監督で緻密に須藤像を作り上げていくのを眺めていました。僕が演じる青砥は、須藤あっての青砥だと思っています。撮影が始まったとき、須藤の芯の強さ、いじらしさ、ささやかな幸せを噛みしめている感じがそこにあって、須藤の横にずっといたいという気持ちが強くなりました。
冬の撮影だったので、とにかく寒かった。待機時間に、井川さんが「こうして肩を動かすと温まりますよ」と、身体の動かし方を教えてくれたんです。いくらでも動きを思いつくから面白くて、僕は勝手に「井川体操」と名づけて(笑)。体操のおかげで、ロケを乗り切った感じです。