信頼していたのに…ぷつっと何かが切れた

夫は同僚と飲みに行くことも多かった。私も夫の会社と仕事で関わっており、知っている人たちばかりなので、彼は「〇〇さんと飲みに行ってくる」と名前で伝えてくる。それも必要なことだと思っていたので、夕飯が要るか要らないかだけ分かれば、普段は「いってらっしゃい」とすんなり受け入れていた。

しかし、その時ばかりはなぜか引っかかったのだ。名前を言わないことも変だし、表情なのか声色なのか、なんだかいつもとは違う気配を感じた。直感としかいいようがないかもしれない。私は見ていたドラマを止め、真正面から夫を見つめた。

「後輩って誰? てか、私もメンタルしんどいんですけど」

夫はきょろきょろと目を泳がせ「誰って……ナミの知らない後輩だよ……」と曖昧に答える。明らかに様子がおかしい。

その時、まるで神の采配かと思うようなタイミングでLINEの着信音が鳴った。スマホの画面を見るや否や、慌ててそれを背中に隠す夫。アホだろ。わかりやすすぎる。完全にピンときた。

「見せて! やましいことがないなら見せられるはず」

おずおずとスマホを差し出しながら「違うんだよ。心配かけたくなくて……」と夫。

画面に通知が出ていた。

「今日はありがとうございました。金曜が楽しみです(ハート)」

知ってる名前。夫の会社の28歳の営業職の女性からだった。

「まじか……」

予感的中だったのに、その文字を見ると胃のあたりがヒュッとして頭が真っ白になった。この人だけはそういう男じゃないと思っていたのに。優しくて誠実で、浮気なんて絶対にしないと、心から信頼していたのに。

ぷつっと何かが切れた。

海にて。あの頃は若かった…