(『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』/(c)NHK)
現在放送中の大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK)。日本のメディア産業・ポップカルチャーの礎を築き、時にお上に目を付けられても面白さを追求し続けた人物〈蔦重〉こと蔦屋重三郎の波乱万丈の生涯を描いたドラマも、まもなく完結へ。そこで12月14日の最終回を前に『べらぼう』の制作統括である藤並英樹さんからお話を伺いました。(取材・文:婦人公論.jp編集部 吉岡宏)

生田さんの演技で魅力的になった悪役・治済

四十七回で、一橋家当主・一橋治済と能楽師・斎藤十郎兵衛の二役を生田斗真さんが演じることが明かされます。

その構想がいつからあったかというと、実は最初からではなく途中で決まりました。4、5月だったと思います。

物語が進んでいくうち、生田さんの演技で、悪役の治済がどんどん魅力的なキャラクターになっていきました。特にそれを感じたのは、東本願寺で撮影したロケですね。

雨の中で「時がきた!」と舞うシーン。

台本上ではあのようにクルクルと舞うことまで書いていなかったんですが(笑)、生田さんの演技を通じて、ある種の狂気性というか、底知れなさのようなものが、視聴者の皆さんにしっかり伝わったように思います。

一方で史実の治済は、当時としてはかなりの長寿。

「でもドラマでは何かしらの罰を与えたいよね」「このまま悪を野放しにしてはいけない!」と脚本の森下佳子さんとの会話で出てきて…。

確かに、これだけの悪業を重ねた治済を勝ち逃げさせてしまうのは、ドラマとしてどうなんだろうか、といった思いが芽生えていきました。