「自分に必要な試練」

<サド侯爵夫人の舞台は18世紀のフランス。悪徳の限りを尽くしたサド侯爵は収監されている。貞淑な妻・ルネは彼を待ち続けるが…。サド侯爵を取り巻く6人の女性の会話劇で物語が進んでいく>

三島由紀夫さんの作品は独特な表現が素敵だと感じる一方で、『サド侯爵夫人』は僕にとってとてもハードルが高い作品。情熱的で毒々しいレトリック、三島ワールドのセリフを自分が発すると思うと、途轍もない試練。それでも、動物的な勘ですが「今、自分自身に必要な試練」だと受け止めています。

成宮寛貴さん

サド侯爵夫人を何度も読むうちに言葉ひとつひとつに日本の美学を感じるようになりました。女性は男性に振り回されてしまうような時代。様々な女性が登場しますが、ルネは夫であるサド侯爵に対する孤高の愛を貫きます。夫にどんなスキャンダラスなことがあっても、「夫を愛する」と決めた強さがある。静かだけれど心は燃えているような、ミニマルなお芝居をしていきたいと思っています。ただ、役に向き合っているうちに自分が今考えていることは壊される。そこからフラットになって役を構築していく覚悟はしていますし、それが必要な役です。

古典のなかの古典ともいえる戯曲ですし、美しい言葉に隠れてしまっているルネの本当の心をどう演じるか。1つ1つ薄い皮をめくるようにルネを見つけていく時間を楽しみにしています。