音楽の力に助けられて
<『わが歌ブギウギ』は、笠置シヅ子と親交のあった作家・小野田勇が脚本を手掛け、昭和62年にNHKでドラマ化。平成5年に音楽劇として初めて舞台化されて以来、繰り返し上演されてきた>
音楽は、短い時間でも感情に寄り添ってくれます。青春時代には、泣きたい時にはわざと泣ける曲をかけたりしますよね。私も音楽の力に助けられたことがたくさんあります。
劇中で描かれるのは戦争前後の厳しい時代。体を売って生きる女の人、お酒におぼれたミュージシャン、仕事を失った人…。今を生きる私たちが想像もできないような経験をされた方が登場します。
つらい経験をされた方たちを当時励ましたのが笠置さんの歌。笠置さんは「自分の歌が誰かを勇気づける」ということを意識していたのだろうと感じています。「あての歌を聴いていたら大丈夫や」と使命感があったはず。実際に笠置さんとお会いしたことがある方ともお話をしました。生で笠置さんの音楽を聴いて、舞台を観ていた人たちはたくさんのエネルギーを受け取っているんです。
人と人のつながりや、人を愛することはいつの時代も変わりません。音楽への愛、人への愛が描かれた作品です。戦後の人たちを励ました笠置さんの爆発的なエネルギーは今を生きる私たちにも響くはず。最近はニュースを見て、落ち込むことが多くありますが、私自身、『わが歌ブギウギ』で笠置さんの力を借りて元気になりたいんです。
<歌手・笠置シヅ子の物語だけに舞台『わが歌ブギウギ』では、「東京ブギウギ」や「ラッパと娘」など大ヒット曲の数々が登場する>
笠置さんの曲は、歌ううちに自分が解放されたような気分になって自然とリズムに乗ってくる。ただ、クイックだったり、普通なら6拍で入るところが7拍で入ったりと難しい。高度な技が散りばめられているので、歌ったときに達成感があります。できれば笠置さんの声に近づきたかったのですが、なかなか難しいですね。骨格が違うからか、声質が違う。似せることはできないので、自分流に歌っていきたいと思っています。