舞台で培った表現力でドラマから映画、ミュージカルまで幅広く活躍する俳優のキムラ緑子さん(64)。朝ドラ『ごちそうさん』では、ヒロインのいけずな義姉が話題に。ドラマ『VIVANT』(TBS)では、特殊部隊「別班」の司令を演じ、少ない出番ながら強烈な印象を残した。「カメレオン俳優」とも言われるキムラさんが2026年に演じるのは、「ブギの女王」と呼ばれ戦後の日本を明るく照らした歌手の笠置シヅ子(1914~1985)。舞台『わが歌ブギウギ-笠置シヅ子物語-』に主演するキムラさんに作品への思いや役作りを聞いた。(取材・文・婦人公論.jp編集部 撮影:本社・奥西義和)
光が注がれたように
昨年の2月ごろ、控室でマネージャーから「笠置シヅ子で舞台の話があります」と言われたんです。「え?どの役?」と聞いたら「笠置シヅ子さんです」と返ってきて。
言われた瞬間に部屋が明るくなって、光が自分に注がれたように感じました。笠置シヅ子さんは、いつか演じてみたいと思っていた役でしたから、お話を聞いたときにはすごくうれしかったです。
<「東京ブギウギ」や「買物ブギー」などのヒット曲で知られる笠置シヅ子。当時としては異例の派手なパフォーマンスと躍動感のある楽曲で戦前から戦後にかけて一世を風靡。大阪松竹少女歌劇団への入団や作曲家・服部良一との友情、恋人との死別、未婚での出産など、波乱万丈な半生は朝ドラにもなり、『ブギウギ』(2023年後期)では笠置シヅ子をモデルにした福来スズ子役を趣里が演じた>
笠置さんを意識するようになったきっかけは15年くらい前、劇団にいた時です。衣裳を担当していた友人が「いつか笠置さんを演じてほしい」と笠置さんの曲を教えてくれました。
劇団時代には、激しい役やテンションが高い役が多かったので、似合うと思ってくれたのかな。割と暗い曲が好きなので、当時は笠置さんの曲を聴いても、明るすぎてあまりぴんとこなかったけれど「そこまで言ってくれるなら、歌も好きだしいつか演じたい」と頭の片隅で意識するようになったんです。