西城さんの妻・木本美紀さんは、西城さんと過ごした日々を、自著『蒼い空へ 夫・西城秀樹との18年』(小学館刊)に綴った。写真は05年、家族5人で軽井沢を訪れたときのもの(写真提供=木本美紀さん)

愛する家族に囲まれて

病気をして変わったことといえば、やっぱり好奇心のあり方かな。それまでの「攻撃的な好奇心」が、「静かな好奇心」へ変わっていった。自分の好きなモノに囲まれているときが、いちばん心地よく感じられるようになりました。これはライフスタイルそのものに影響する、大きな変化ですよね。

具体的には、病気をしてから特に、よりシンプルで見飽きないデザインのモノに惹かれるようになりました。自分でも驚いちゃうよね、あんなに派手好きだった僕が(笑)。たとえば、野の花に好きな器を組み合わせて楽しんでみたり、料理を盛る器にしても、あまり主張しすぎずに食材を引き立てるような、さりげない美しさをもつものがいい。

今お話ししているこのお店も、自分がとてもリラックスできる空間のひとつです。こうした場所で過ごす時間が、僕のエネルギーを充電してくれる。ポパイのホウレン草みたいなものですよ。そうやって頑張る力をもらっているのだから、常に「ありがとう」という気持ちをもって、モノなら心を込めて手入れしていたいし、好きな人は、大切にしたい。

好きな人というのは、もちろん家族のことです。長女は今2歳半ですが、この子の小さくて温かい手を引いて歩くときに、いつも思うんです。世の中にこんな幸せがあったのか、って。それほど信心深くないこの僕にさえ、神様はこんな幸せを与えてくれた。ありがたいことです、なんて思っちゃう。

何でも吸収できる年齢なんですよね、どんどん言葉も覚えるようになって、日々の成長に驚かされています。親である僕たちも、子どもから学ばされることがたくさんある。一緒に勉強していかなくちゃね。

倒れた直後に長男が生まれて以来、当然のごとく僕がおしめを換えています。これが全然イヤじゃない自分に、ちょっとビックリだね(笑)。イヤでないどころか、なんだか妙に嬉しいんですよ。そんなとき、ああ、オレは父親なんだな、としみじみ思う。年を重ねてからの経験だから、余計にそう思うのかなあ。

妻とは今年で結婚4年目ですが、新婚の時期から、本当にたいへんな思いをさせてしまいました。僕の病気を気丈に受け止め、ずっと励まし続けてくれた彼女の存在がなかったら、僕は闘えなかったと思う。本当にかけがえのないパートナーです。

この病気はいつ再発するかわからない。僕の導火線にはまだ火がついているようなものなんです。今でもときどき不安になり、つい弱音を吐いてしまうこともありますが、そんなとき、いつも彼女が励ましてくれる。まったく頭が上がりません。(笑)

そんな愛すべき家族たちから、「パパはすごい」と尊敬してもらえるような父親でありたい。そのためならば、多少の我慢は仕方がないかな、てなもんですよ、オレは。(笑)