生きる喜びを伝えたい

今、僕は、仕事をしていても、子どもの相手をしていても、歩いていても、何をしていても、生きていることが嬉しくてたまらない。リハビリを始めたころは、手足が動かず、自分ではコップひとつ持つこともできなかったんですから。こんなふうにまた歩き出すことができるなんて想像もつかなかった。「生きることをあきらめないでよかった」、今は心からそう思えるんです。

確かに、病気になる前よりフットワークは悪くなったかもしれません。でも、素敵な時間を積み重ねていけば、その年齢なりの輝きをもって生きられるはずだ。そう信じられるようになってから、残りの人生をどう過ごすかについての考えも変わってきました。

遅まきながらではありますが、他人が見たときの魅力に左右されず、自分自身が輝いていられるかどうか、ということだけを基準に生きていくことが、やっとできるようになってきた気がします。周りの評価を気にせず、カリスマ性をまとう必要もなく、マイペースで、ありのままの自分をさらけだせる。今の環境はありがたいです。

となれば次は、自分が気づいたこと、生きることのすばらしさを、歌や芝居を通じて伝えていきたい。歌がうまいかへたかというのは、もはやそんなに大きな問題ではないけれど、以前よりもずっと、言葉を大切にするようになりました。

たとえば、コンサートで必ず歌う「めぐり逢い」という歌がありますが、「あなたに会うために生まれてきた、これからともに生きていこう」という詞に、僕の心は震えてしまう。そうか、僕にとっての「あなた」とは、ファンであり、家族だったんだな……と思うと、歌いながら涙が出そうになることもあります。

そんな心で歌う歌が、「元気で生きていこうよ」というメッセージとして皆さんに伝われば、それこそが僕がずっと求めてきたことだと思うんです。それが、奇跡的に助けられた僕の、使命のような気がしてならないんですよ。