「ずっとコンプレックスの塊で、デビュー以来『できない自分』を責めてばかりいました」と氷川さん(撮影:初沢亜利)
『NHK紅白歌合戦』では着物姿で登場し、次の瞬間、華麗なボディスーツに「変身」。巨大な黄金の龍に乗って「限界突破×サバイバー」をロック調の衣装で激しく歌い上げた氷川きよしさん。デビュー20周年を迎える節目の年に公式インスタグラムを開設すると、その妖艶なビジュアルが国内外で話題になっている。彼のなかでいったい何が「変化」したのか? 新たなチャレンジへの原動力を聞いた。(構成=村上雅子 撮影=初沢亜利)

思い切り脚を出したかった

2019年はデビュー20周年。その記念的な年に、「限界突破×サバイバー」を歌う映像がSNS上で一気に話題になったことがきっかけで、演歌歌手という枠を超えた、自由な表現ができる機会を与えていただけました。

また、40代となり、歌い手として「成人」とも言える20年を迎えたことで、歌のジャンルも飛び越え、衣装やメイクなどビジュアル的にも、自分らしい新たなチャレンジができるようになったのかな、と思います。

昨年(2019年)12月の東京国際フォーラムでのコンサートでは、真っ赤なエナメルのホットパンツで「限界突破×サバイバー」を歌いましたが、どうしてもあの衣装を着て、思い切り脚を出したかった。きわどい短さだったので、リハーサルのときに「脚を広げないで」と言われていたけれど、いざ本番になったらスイッチが入って、すっかり忘れちゃった。(笑)

実を言うと、昔から細い脚がコンプレックスだったんです。デビューしてからも、脚を鍛えるために走ったり、苦手な筋トレをしたりしました。でも、脚に負い目を感じて隠すより、思い切って見せちゃえと思った。細くてもきれいに見せる方法を考えればいいし、コンプレックスを逆手に取るほうが面白いと。

えっ、美脚でしたか? 良かった! 美に対してはすごくこだわりがありますし、自分流の見せ方や表現の仕方は持っているので、これからはそういう自分を大切にしたいですね。

脚のこともそうですが、ずっとコンプレックスの塊で、デビュー以来「できない自分」を責めてばかりいました。演歌の世界は男らしさの“型”を求められますが、たとえば、袴一つ着るのもなかなかサマにならず、舞台で殺陣をやることを求められてもまったくできなくて、そのつど落ち込みました。