(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
厚生労働省が2022年に発表した「人口動態統計」によると、同居期間が20年以上の夫婦の離婚割合は上昇傾向にあるそうです。一方で、夫婦間で不満が募っていても離婚にまでは至らなかったり、関係を再構築したりするケースもあります。そこで今回は、朝日新聞取材班が熟年離婚の実態についてまとめた『ルポ 熟年離婚』から抜粋し、ご紹介します。

平穏無事に一生を終えると思っていたが

それは、40年以上の勤めを終えた夫が最後に出勤した日のこと。東京都に住む70代の主婦は、長年家族のために働いてくれたことに感謝の気持ちでいっぱいだった。

帰宅した夫を「ご苦労様でした」とねぎらった。夫の手には職場でもらったバラの花束があった。「奥さんもご苦労様でした」と贈られた花だという。

「『奥さんの好きな花は』と聞かれたけど、わからんと答えた」と夫。二人の娘は毎年、誕生日に大好きなユリの花を贈ってくれる。「娘にもらったの」と夫にも話していた。「好きな花ぐらい知っててよ」。がっかりしたのを覚えている。

とはいえ、退職後の暮らしを心配してはいなかった。

ずっと一緒にやってきた。このまま、ともに、平穏無事に一生を終えると思っていた。

「でも、そうじゃなかった」

5歳年上の夫とは20歳のころに職場で出会った。一緒にいるとなんとなく安心できる感じがして、1年後に結婚した。

長女を出産後に退職し、専業主婦として次女、長男も含めて三人の子どもを育てた。

子どもたちと進学や就職を話し合うとき、夫は価値観を押しつけるようなことを口にし、話がずれていく。だから、夫には事後報告の形で伝えることが多かった。

それでも、大きな波風は立たなかった。