映画を監督中の奥田さん(写真提供:奥田さん)

それでCMのロケ地の山奥から深夜に車で帰るのに3時間くらいかかるんですけど、そこでずうっと話しながら、大まかな構成ができちゃった。すぐに『長い散歩』の第1稿ができて、緒形さんに送ったら、「うん、この台本はポエムだね」っておっしゃった。「いや、いいぞ、うんうん」って。

そのロケ中に実はもう一本プロットを書いてて、緒形さんに渡したら、夜中に電話がかかってきて、「監督、俺はできそうもないぞ」。「予算もスタッフも決まってるのに、なぜですか?」と聞いたら、「肝臓がいかれた。悪い、ごめんな」って。

それでこの企画はナシになったので、僕のスケジュールがどーんと空いたんですよ。そこへ倉本聰さん脚本のテレビドラマ『風のガーデン』の話が来たんです。台本開いたら中井貴一さんの父親役で緒形拳さんの名前があった。

ロケ先の富良野で会った緒形さんは一段と痩せ細ってて、でも「おおー」って元気よく声かけてくれてね。六本木で打ち上げがあった時は、僕の目の前に座って、一杯だけ何か飲んで、「じゃあ、お先に失礼する」。

送ろうとしたら、パッと中井さんが立ったんで、そこは主役にゆずって握手して別れたのが最後でした。その5日後に緒形さんは亡くなって、下落合のお寺へ駆けつけて対面した時、僕はもう、人生でこんなに泣いたことがないくらい号泣しましたね。