十五時間あまりにわたる飛行機移動の末、ミラノ空港に到達するや、大きなスーツケースをごろごろ引きずりながら(昔はキャリーバッグすらなかったが)、今度は列車に乗り換える。列車でミラノからフィレンツェへ行く算段であった。駅に着き、切符を買おうと窓口を探すが見当たらない。周囲の様子を観察していると、誰もが自動券売機で買っているようだ。長蛇の列の後ろにつく。番が回ってくると、はてこの券売機、どこをどう押したり引いたりすればいいのか要領を得ない。ようやくクレジットカードで買うのだと理解する。が、どこにカードを差し込むんだ?

差し込んでみたところで、なぜか受け付けてもらえない。時間をかけてオロオロしている我々老夫婦の後ろでイタリア人の女性が、「困ったもんだ」とばかりに教えてくれるが、彼女の言っていることもよくわからない。やっとクレジットカードが挿入され、紙の切符が出てきた。「グラッチェ、グラッチェ」と愛想笑いを振りまきながら不機嫌そうな婦人をあとにして、さてホームへ移動する。

「あと十五分で列車が来るみたい」

安堵したと思ったら、相方、

「おしっこ」

嘘でしょ。今ですか? どこにトイレがあるのだろう? 列車が来るまでには少し時間があるとはいうものの、焦る。

「きっと上の階にあるんだよ。急いで行ってきて!」

「大丈夫、大丈夫」と言い残して姿を消したきり亭主殿、帰ってこない。列車はあと五分で入線するぞ。あと三分。どうするどうする。あと二分となったとき、ようやく下りエスカレーターにその姿をみとめ、

「なにしてたのよ!」

「だって混んでたからしかたないじゃないか」

 さっそく夫婦喧嘩が始まることになる。

 お手洗いが近いというのも、高齢者の注意点の一つであることを知る。

ね。まだ旅を始めたばかりなのにこの有り様。というところで行数が埋まってしまいました。高齢珍道中の続きはまた次回。

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