令和版『モダン・タイムス』
早朝4時、夏の空がようやく白み始めた時刻、東京の郊外にある宅配便会社の倉庫を訪れて入口で待った。やがて、同じような日雇いの作業員が営業所の入口にぽつぽつと集まってきた。老若男女さまざま。同世代のオジサンもいれば、高校生の“ギャルグループ”もいる。家庭の主婦らしき女性もいる。集合時間は4時30分。その時間までに30人ほどの作業員が集まってきた。女子高生たちははしゃいでいるが、ほかはだれも口をきかずにじっと待機している。
受付が始まると、まず誓約書にサインを求められた。主な内容は作業中に見た荷の情報を外に漏らさないということ。その営業所の担当地域に著名人がいたとして、そこに届いた荷の内容を知ることになっても他言しないよう徹底された。
採用された職種は荷分け。営業所に集まってきた荷を配達する地域ごとに分け、トラックに積む仕事だ。トラックが出発する8時には積み込みを終了しなくてはならない。
サッカーの試合ができそうなほどだだっ広い倉庫内に案内されると、縦横にベルトコンベアが動いていた。常駐のパートさんであろう女性に、働くポジションを指示された。そこに流れてくる荷を分けていく。誰も口を利かない。ロボットになった気分だ。実際に、近い将来ロボットに奪われる作業かもしれない。
チャールズ・チャップリンの映画『モダン・タイムス』を思い出した。劇中、巨大な製鉄工場で働く主人公の工員は、ベルトコンベアを流れる部品のナットをスパナで締め続ける単純作業をくり返していた。単純作業の連続に耐えられなくなった工員は精神的に病んでいく。
宅配便会社は令和版の『モダン・タイムス』だ。現場のシステムはよくできている。分業制が徹底され、そのポジションに誰が来ても問題なく機能するだろう。さすが大手流通会社だ。
