スマホを使いすぎると、目が疲れてかすんだり、乾いてゴロゴロしたり。その不快な症状は「VDT症候群」かもしれません。いったい何が原因で、放置するとどうなるのか。眼科医に聞きました(構成=山田真理 イラスト=本田佳世)

長時間にわたって目を酷使している現代人

私たちの生活は、スマホやタブレット、パソコンなど多くの表示機器(ビジュアル・ディスプレイ・ターミナル=VDT)に囲まれています。そうした機器を長時間使うことで起きるさまざまな不調を「VDT症候群」といいます。

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その原因を、主に「目」への影響から探ってみましょう。

そもそも、スマホなどディスプレイ機器は、それ自体が光を発しています。そうした「まぶしい」物体を、朝から晩まで「見る」ことに私たちの身体は慣れていません。かつて洞窟暮らしだった時代、日が落ちれば寝るしかなかったことを思えば、現代人は長時間にわたって目を酷使しすぎなのです。

使いすぎれば疲労するのも当然。特に毛様体といって、水晶体の厚みを変えてピントを合わせる機能を担う部分の筋肉が疲労すると、目の焦点が合わずにしょぼしょぼしたり、目が重い、目がかすむ、目の周りが痛むといった症状が起こります。それが慢性化すると、スマホ老眼といって、若いうちから老眼が進んでしまうことも。

また私たちは、何かをじーっと見るとき、無意識にまばたきの回数が減っています。普段は1分間に30回ほどですが、本など紙の文字を見る際は約半分、スマホなどディスプレイを注視するときは6~8回に激減。

まばたきには目の表面を涙でうるおして守る役割があります。この回数が減ることで目が乾き、それが慢性化したのがドライアイ。ひどくなると目の表面だけでなく、角膜や結膜の健康が損なわれる恐れもあります。

目を酷使することで、白内障や緑内障の進行が早まる危険性も見過ごせないでしょう。さらに加齢黄斑変性といって、進行すれば失明にもつながる病気のリスクがスマホのまぶしい光を長時間浴びることで高まる可能性があります。加齢黄斑変性は食事の欧米化も関係するとされ、若い時からスマホを使ってきた現在の中高年の失明リスクが高まることが心配されています。