「能力が低い人ほど自己評価が高い」という実験結果

それに加えて、能力の低い人ほど自分の能力を過大評価する傾向があり、それが実力不相応にクリエイティブな仕事をしたがることにもつながっていると考えられる。

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心理学者のダニングとクルーガーによる研究を紹介しよう。

なぜかできない部下が自信たっぷりで、できる部下のほうが謙虚で自信がなく不安が強いというのは、多くの管理職が感じていることのはずだ。そのことを実証してみせたのが、ダニングとクルーガーである。

その実験では、「論理的推論の能力」などいくつかの能力に関するテストを実施し、同時に自分のユーモアのセンスについて自己評価させた。自分の能力の自己評価は、パーセンタイルを用いた。これは、自分の能力が、全員の中で下から何%あたりのところに位置するかを答えるものである。たとえば、20パーセンタイルというのはかなり下のほうに位置し、50パーセンタイルはちょうど平均、80パーセンタイルになると、かなり上のほうに位置することになる。

まずは成績順に4等分し、上位4分の1に属する最優秀グループ、そのつぎに位置する平均より少し上のグループ、さらにそのつぎに位置する平均より少し下のグループ、下位4分の1に属する底辺グループに分ける。

「論理的推論の能力」についての実験結果をみると、下位4分の1に属する底辺グループの平均得点は、下から12%のところに位置する点数だった。平均が50%なので、非常に低い点数であり、論理的推論の能力はきわめて乏しいことになる。

ところが、底辺グループの自己評価の平均をみると、68パーセンタイルとなっており、平均の50パーセンタイルを大きく上回っていた。これにより、底辺グループの人たちは、自分の論理的推論の能力は平均よりかなり上だと思い込んでいることがわかる。

つまり、実際には下から12%の実力しかないのに、本人たちは平均をかなり上回っていると思っているのであり、自分の能力を著しく過大視していることになる。

一方、最優秀グループでは、そのような過大評価はみられず、むしろ逆に自分の能力を実際より低く見積もる傾向がみられた。

どの能力に関する実験結果をみても、成績下位の人たちほど自分の能力に対する過大視の程度が大きく、下位4分の1の人たちの過大視が最も著しいことが示されている。実際には下から1割程度の成績の人、つまり約9割の人は自分より成績が良いにもかかわらず、自分の能力は平均よりずっと上だと信じている。反対に、最上位4分の1の人たちだけは、自分の能力を実際より過小評価していることが示された。

このようにダニングとクルーガーは、能力の低い人ほど自分の能力を著しく過大評価しており、逆に能力のとくに高い人は自分の能力を過小評価する傾向があることを実証してみせた。このことをダニング=クルーガー効果という。