自分の能力の弱点について知ってもらうことが大切
これら一連の実験によって証明されたのは、能力の低い人は、ただ何かをする能力が低いというだけでなく、自己認知能力(この場合は、自分の能力が低いことに気づく能力)も低いということであった。
まさにこのことが、なぜか仕事のできない人ほど自信をもっているということの理由といえる。物事を理解する能力の低さが自己認知も妨げるため、自分の能力が低いという事実にも気づかないのである。
ここから予想できるのは、このような能力の低い人たちの理解力を鍛えたら、自己認知が進み、自分の能力の低さに気づくのではないかということだ。ダニングとクルーガーは、それを確認する実験も行っている。
その結果、認知能力を鍛えるトレーニングをさせて、認知能力が向上すると、成績下位グループの過大評価傾向は弱まり、とくに下位4分の1の人たちの著しい過大評価傾向は大きく改善されることがわかった。
たとえば、論理的推論のスキルを向上させると、自分の論理的推論の能力の低さに初めて気づくことになったのである。
自分の実力をあまりに過信することによる判断の歪みや安易な仕事ぶりが、同じようなミスを繰り返させたり、致命的なミスにつながったりすることもある。また、自分の実力不足に気づかずに実力不相応な自己アピールをして、周囲を呆れさせることもある。ゆえに、認知能力を鍛えるように導くことが必要である。
非常に厳しい現実を突きつけるような知見だが、まずは自分の能力不足という現状に気づくことがなければ改善しようと思うこともないわけだから、自分の能力の弱点についての自覚をもってもらうことが、成長への第一歩と言える。
※本稿は、『すぐに「できません」と言う人たち』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
『すぐに「できません」と言う人たち』(著:榎本博明/PHP研究所)
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