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施設に入るためだったり、伴侶に先立たれた余生の希望を叶えるためだったり──。親によかれと思って子どもは片づけを進めようとするのです。でも実際は親の頑固さに振り回されて衝突が絶えない、そんなケースも少なくありません
《アリサさんのケース》

整理整頓が絶望的に苦手な母

アリサさん(59歳・仮名=以下同)が妹から電話を受けたのは2018年10月のことだ。

「便利屋さんが300万円の見積もりを置いていってるよ」

築40年以上の実家マンションは建て替えが決まっていた。8年前に父親が亡くなった後から、家はモノで溢れていった。妹は小さめの3LDKに衣類や古雑誌などが天井近くまで山をなす「魔窟」を見て、母親との同居を断念した。

「長女の私は母に片づけろと迫るので、長年“出禁”になっていました。昔から母は目についたモノをぱっと買うけれど、整理整頓が絶望的に苦手。諫め役の父もいなくなり、買い物に勢いがついたのです」

退去期限が決まっても、当時84歳だった母親は頑なに「私が全部片づける。手を出さないで」と言い張った。頭はしっかりしているものの、背中は曲がり、足元も少しふらつく。アリサさんたちは仕事や家の用事で忙しく、母親の頑固さもわかっていたので、あえて「放っておく」ことにした。

「退去期限が近づけば母もあきらめるだろう。そうなったらやっと片づけられるねって、姉妹して青写真を思い描いていました」