個性的な松野家
<怪談オタクのトキ、いい加減で適当な司之介、夫に突っ込みを入れるフミ、明治の世に変わっても武士として生きる勘右衛門。松野家を中心に、個性的なキャラクターによる真剣だけれど、ちょっとずれた会話劇が笑いを生み出している>
トキや松野家の設定をどう作るかは、だいぶ悩みました。トキは武士の娘だから、はしゃがない方がいいかなと思っていたんです。トキは父である司之介のことを立てるし、妻であるフミもあまり会話に入ってこない。そういう真面目な方向で考えていましたが、どうしてもうまく書けなかった。
初回で、松野家は家族そろって丑の刻参りをします。実は当初書いていた脚本は、放送されたものとは全く違いました。勘右衛門もいなかったし、トキが立ったまま寝るシーンもなかった。あまりうまく書けていないと自分でも思っていたので、書き直すことにしたんです。
脚本の会議では、武士然とした勘右衛門が「丑の刻参りの場にいたらおかしい」という意見で一致していたんですが、制作側には無断で勘右衛門もその場にいることにした。「丑の刻参りをするには最高の夜じゃな」という司之介のセリフにフミが「最高ではないと思いますが」と突っ込み、勘右衛門は「どちらかというと最低の夜じゃな」と言う会話ができ上がりました。ここで、モノを言い合う感じの松野家の家族の形が固まったんです。
『ばけばけ』で好きなキャラクターは勘右衛門です。勘右衛門はすごく大真面目で、ヘブンのことはずっと「ペリー」と呼び続ける。1人だけ髷も落とさないし、木刀を振り回しているけれど、ふざけているわけでもない。そのかたくなさがいい。僕の脚本を象徴するような人物。自分の芯は曲げず、みんなからどう思われるかも気にせずに生きている人が好きです。『ばけばけ』の登場人物は全員が大真面目に生きていますが、その中でも、「まじめだけれどちょっと笑える」ところは、勘右衛門に凝縮されているかな。