僕自身の「代理体験」

かつて「野球不毛の地」とまで呼ばれていた岩手県も、最近では甲子園(全国高等学校野球選手権大会)で上位に食い込むことが珍しくなくなりました。ありがたいことに、僕が出場した2009年の花巻東高校が甲子園で準優勝したことが、県全体の野球レベルが上がるきっかけになったと言っていただくことがあります。もちろん、さまざまなタイミングが重なり、幸運にも僕たちの代で勝ち上がれたというのは事実です。

しかし、実はその背景には、僕自身の「代理体験」がありました。僕が中学生だった3年間、岩手よりもさらに寒く、雪が深い北海道の駒大苫小牧高校が、田中将大投手を擁し、甲子園で2連覇、そして3年目には準優勝という、とてつもない偉業を成し遂げたのです。中学時代の3年間をまさに駒大苫小牧の野球と共に過ごした僕は「北海道でもできるなら、岩手でもできるはずだ」と本気で思いました。この代理体験こそが「岩手でもできる」という気持ちにさせてくれました。

『こうやって、僕は戦い続けてきた。 「理想の自分」に近づくための77の習慣』(著:菊池雄星/PHP研究所)

そして、そこから大谷翔平選手や佐々木朗希選手という2人のスーパースターが生まれ、大活躍を遂げた。その姿を見て、今度は岩手の子どもたちが「俺もできる」という気持ちになっている。素晴らしい連鎖が起きているのだと思います。

あの人もできたのだから、私もできる。

その気持ちを持つこと。そして、その気持ちを強く、確かなものにするために、「代理体験」をすることが、僕たちの可能性を無限に広げてくれる気がします。