イラスト:大塚砂織

 

コロナが追い討ちインジオに迫る危機

今、インジオと呼ばれるブラジルの先住民族が絶滅の危機に晒されている。

一口にインジオと言っても、ブラジル国内に約225部族、80万人が約1000万ヘクタールに存在する。それも1ヵ所ではなく、広い地域に大小さまざまな部族が点在している。

先住民族と聞くと、“未開の人”というイメージがあるだろう。しかしインジオの多くの部族は、今や洋服を着るし、食料を外部からの供給に頼る部分も大きく、カップ麺やスパゲッティなどを食べていたりする。収入源として大きいのは観光業。観光客向けの「ジャングル・ツアー」では、インジオの暮らしぶりと昔から伝わる知識を披露してくれる。なかでも虫除け、傷、腹痛などに効く薬草の知識は豊富で、中にはそれを目当てに来る北米や欧州の研究者もいるという。薬草などの現物を持ち帰っては成分を分析し、化学的調合をして新薬開発などに活用している場合もあるそうだ。

外部の人々や文明とほどよい距離を保って暮らしていたインジオだが、2019年にボルソナーロ大統領が就任したことで状況は悪化した。

これまでは、FUNAIと呼ばれる国立インジオ保護財団が保護区を設定し、彼らを守ってきた。しかし、ボルソナーロ大統領は経済優先で、森林開発に力を入れ、保護区を縮小し、インジオを切り捨てる政策に舵を切った。さらに、この政策に反対する運動を起こしたインジオのリーダーたちが殺害されるも、犯人が見逃されるという事件が発生。迫害が強くなり希望を持てず、自殺するインジオも増えている。

今回、追い討ちをかけるように、先住民専属の外部の医師らを経由してインジオに新型コロナウイルスの感染が広まった。医療インフラがじゅうぶんではなく、外界の菌に免疫の低いインジオにとって、新型コロナは脅威だ。15〜16世紀の大航海時代にも、天然痘により新大陸の先住民がほぼ絶滅に追い込まれた例がある。悲劇を繰り返さないために、支援を呼びかける署名活動が始まった。

経済優先の政策やウイルスにより、歴史ある文化が失われてはならない。これを機にインジオへの対応が見直されることを祈っている。(サンパウロ在住・大久保純子)