遠藤綾子さん

「津波見てないの?なーんだ」と言われて

そんな綾子さんが、現在は石巻市の震災遺構で働いていると知った時は驚いた。

津波で500人以上が犠牲になった地区にある石巻市立門脇(かどのわき)小学校。校舎にいた生徒たち224名は全員、高台へ避難し無事だった(ただし、先に下校していた1、2年生には7人の犠牲者が出ている)が、学校の前に広がっていた街は完全に水没。津波で流された家や車を壁となって受け止めた校舎は、火災が発生し黒焦げになった。

その一部が震災遺構となり、一般公開された。館内には数多くの展示物もあり、国内外から見学者が訪れている。しかし、被災者にとってはつらい記憶を呼びおこす場所。避けて通る地元の人も多いなか、綾子さんはなぜそこで働く気になったのか。理由を聞きたいと久しぶりに彼女を訪ねた。

メディアの震災特集などで毎年取り上げられ、石巻では知る人が多い遠藤夫妻。だから普段は目立たないよう、綾子さんは「自分を知る人がいなそうな場所を選んで、アルバイトを転々としてきた」と話す。震災後、隔年で開催された夏のアートフェスティバルでは、案内役も経験。観光客に、石巻の自然や歴史を紹介する仕事は楽しかった。

「でもある時、若い子たちに『津波見た?』と聞かれて、『内陸にいたから見ていないの』と答えたら、『なーんだ』という反応で、衝撃を受けました。ほかにも、震災のことをあまり知らない人が多いのに愕然として」