単身高齢者のための集住の仕組み
かつて九州圏の郊外住宅地にアクティブシニアと母子世帯のシェアハウスを開設した事業者は、数年で閉鎖に追い込まれた。地元高齢者向けに複数回開催したワークショップでは、「夫が亡くなり一人暮らしが寂しいので誰かと暮らしたい」「広い持ち家の管理が大変なので元気なうちに身軽な賃貸住宅に移りたい」という意見が多く挙がっていた。しかし、いざシェアハウスを開設してみると、持ち家を処分してまでシェアハウスに移る人はいなかった。
これについて事業者は、急な立ち退きで住居を失うなど、必要がある人のなかにはシェアハウスを選択する人もいるかもしれないが、持ち家層が自分でタイミングを決めてシェアハウスを選ぶというのは相当な勇気がいることだとし、「結局は、独居での生活が難しくなった段階で、施設やサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)に移る」という傾向は変わらないのかもしれないと振り返っていた。
一方で、ここ数年、筆者の周辺では、中高年向けのシェアハウスの必要性を聞く機会が増えた。例えば、関西圏で介護型のサ高住を運営する事業者は、介護が不要な60歳未満の単身者からの入居相談を受ける機会が増えたと話していた。年齢的に、一般の不動産会社では仲介をしてもらえないが、介護が不要なため、サ高住やその他の高齢者向け施設には入れない。他方、60歳を超えていても、賃貸住宅で自立して暮らしたいという高齢者のニーズも高くなっているのだという。この事業者は、サ高住に隣接する場所に中高年向けのシェアハウスを新設して、制度から漏れ落ち、不動産市場からも排除される人々の受け皿を準備しようとしていた。
サ高住では、食事や介護サービスなどを提供するほか、看護師も常駐しており、もしもの時の体制も万全である。シェアハウスでの生活が難しくなった場合にはサ高住への移行を促すこともでき、行政機関と連携して次のステップを検討することも可能だろう。
このように、全国には、まだ多いとはいえないものの、単身高齢者のための集住の仕組みを模索している事例がある。以下では、そこでの生活を少しのぞいてみよう。
