韓国エンタメの質の高さを再確認

古市 『愛の不時着』は男性ファンも多いと言われていますが、そこには視聴環境も影響していたと思います。新型コロナウイルスの感染が拡大するなかで、皆が家にいたこと。そして動画配信サービスで視聴できるドラマだったこと。いつでも好きな時に観られるというのは大きいですよね。

中瀬 昭和30年代の日本を思い出して、郷愁を感じているおじさんもいるみたい。

古市 『梨泰院クラス』などほかの韓国ドラマも観ていますけど、『愛の不時着』のように、男性が活躍して女性は黙って見てる、みたいなドラマは、もう韓国では流行らないのかもしれませんね。

中瀬 本当にそうだね。今回は私のようにいったん卒業して戻ってきた人も結構いると思うんだけど、古市は『冬ソナ』は観た?

古市 観てないです。あの茶髪でメガネをかけた人に、なぜ皆が熱狂していたのかがわからない。(笑)

リ・ジョンヒョク役のヒョンビンは、テレビドラマ『私の名前はキム・サムスン』『シークレット・ガーデン』などに出演。2011年から約2年間、海兵隊教育訓練団で兵役生活を送った

中瀬 当時はキュンキュンしたの! それにしても韓国のエンタテインメントは質が高いよね。映画やドラマを観ると話の面白さはもとより、ブサイクキャラから美男美女まであらゆる層の俳優を取り揃えていることに驚く。私なんか日本で女優になりたいと言ったら笑われるけど、韓国なら仕事があるかもしれないと思うもの。(笑)

古市 すそ野が広いですよね。

中瀬 日本だと、ある世代の役者の顔ぶれがいつも同じだったり、登場人物が全員シュッとしていたりするでしょう? 現実社会には太った人もたくさんいるのに。

ユン・セリ役のソン・イェジンは、1999年に『おいしいプロポーズ』の主演に抜擢され、映画『私の頭の中の消しゴム』『ザ・ネゴシエーション』など話題作に出演

古市 日本の芸能事務所も、最近はいい子を見つけてスカウトしても断られるそうです。有名税などのリスクを考えて敬遠されると。そこへいくとまだ貧富の差が激しい韓国ではエンタテインメント業界に一発逆転の夢を抱く人も多い。

中瀬 韓国は国全体でエンタメを推しているから。BTS(世界で活躍中の韓国のヒップポップグループ)のように、コリアンドリームとして世界に羽ばたく道筋も見えた。

古市 お金をかけられるので優秀な人材を集められるし、余裕をもったコンテンツ制作ができる。日本のドラマは地方ロケをする予算さえないと嘆いているのに、『愛の不時着』なんかモンゴルやスイスでも撮影しています。

中瀬 日本も面白い作品を作る力はあるんだから期待したいよね。まだ『愛の不時着』を観ていない人は、だまされたと思って3話まで観てください。そこから加速度的に面白くなって、絶対にジョンヒョクの魅力に落ちますから。音楽もすばらしくて、サウンドトラック毎日聞いてうっとりしています。

古市 北朝鮮の描写など、男性が観てもハマる要素がたくさんあります。ところで『婦人公論』の読者ってネットフリックスは観られるんですか?

中瀬 そこは頑張ってほしい!


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