そして何より、適切な介護事業所のサポートが必須だ。
グループホームも訪問介護も見てきたからこそ、小島さんは、「要介護3になると自宅で過ごすのがいいか、施設に入ったほうがいいか、ケアマネージャーに検討を勧められることもあり、迷うところです。しかし正解はないと思います」と話す。
施設に入るならば、新しい人間関係をつくれる体力と精神力があるうちのほうがいい。最初はかたくなに拒否していた人でも、グループホームに入ってみると、あっさり受け入れることも。一方で、少数だが入所しても本人の強い希望で自宅に戻るケースもある。
小島さんが印象に残っているのは、90歳を過ぎた男性だ。古い賃貸アパートで外階段。エレベーターがないので、外出もままならない。家族が心配して施設に入れたのだが、退所してしまった。「本当に自宅に戻っていいのか」何度も本人に確認したという。
「それでも本人が、ここでいいんだと言って、訪問介護と訪問看護で過ごしました。かなり認知症が進んでいましたが、最後は、通っていたヘルパー全員に『ありがとう』と感謝して、人生を全うしました」(小島さん)
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「認知症は100人いれば、100通り。2人と同じケースはない」という小島さんの言葉通り、ひとくくりにはできない。同じ要介護度でも認知症の程度には違いがある。だからこそ、周囲や家族の理解のもと、その人に合ったサポートが受けられれば、認知症だってひとりで楽しく生活していけるのだ。最後まで自宅が良いとも限らないので、その場で選択するしかない。
認知症の高齢者は全国で462万人(2012年)。臨機応変に、その人にふさわしい快適な生活が送れるような社会が望ましいと思う。