弱き者の代弁者
連続テレビ小説は15分と放送時間が短いので、ピンとくるセリフ、1行を取りこぼさないようにしています。たとえば、「直美の後ろ姿を見つめる寛太」という1行があったとして、俳優としてはそこにいろんなニュアンスを込めたいという欲がある。カットされてしまうかもしれないけれど、その1行にどんな表現を込めるのか、という勝負をしています。
寛太はつかみどころがないし、何を考えているかわからない部分も多いけれど、寛太を1人の人間として生かしてあげたいし、視聴者に少しでも寛太のことをわかってほしい。脚本の吉澤智子先生が残した1行に魂を吹き込む作業をしています。
これから脚本がどうなるかわからないけれど、寛太として激動の明治を生き抜くということだけは決めていて。明治時代には飢饉もあって感染症も流行りました。寛太のように幼いころに親を失った子どももいたでしょうし、新政府がシステムを作るなかでこぼれ落ちてしまった子どももいる。
そんな子が大人になった姿が寛太だと思っています。だから、寛太は弱き者の代弁者でもある。『風、薫る』の物語が終わりを迎えた時に、観ている方に「寛太、生き延びたな」と思ってもらうことが使命だと感じています。