闘う人生が好きだと言った。

「私には恵まれた環境のお嬢様は書けない。逆境に興味があって、そこから這い上がるドラマが好きなんです。逆境の状態から、人生がどう変わっていくのかを書きたい」

NHK大河ドラマ『西郷どん』の脚本を引き受けた理由もそれだった。

「親しくさせていただいている、戦友のような林真理子さんの原作。彼女とはこれまでにも何本か組んでいますし、ほかの人に渡したくなかった。それから西郷隆盛という男がとても魅力的に描かれている。貧しさから這い上がって、2度の島流しという逆境にあってさえ、くじけず国に尽力した。いつも人様のことを思った、薩摩の熱く情の深い男。これは書くしかないと」

作家の林真理子さんとは戦友だと語る。(写真は『婦人公論』2019年12月24日・1月4日合併特大号より)

戦友だという、林真理子は中園についてこう語る。

「今回、ドラマが始まる前にふたりで奄美大島の、ある霊木にヒット祈願してきました。もう長いおつき合いですが、誰に対しても分け隔てのない誠実な人。いい意味で人心掌握がうまく、制作スタッフは、中園さんのためならひと肌脱ごうと思うのではないでしょうか。巧妙に女を売りにするような人もいますが、そういう面はまったくなく、徹底したプロフェッショナルです」

中園は西郷についても、歴史学者の磯田道史と何度も会い「50時間以上」もの取材をしてきた。中園の印象を磯田はこう語る。

「驚くほど徹底した取材で、質問も鋭い。人物を細部にわたってリアルに造形していく力量が凄く、同時に普通の視聴者の目線もお持ちです。どのようにすれば視聴者が感情移入できる物語になるのかが、よくわかっていらっしゃるのでしょう。人の気持ちを汲む方で、酒席ではとにかく人を楽しませますね。ずっと穏やかなのですが、『人の恋路を邪魔する奴はけしからん!』と怒っていた時があって、妙に覚えています」

ドラマには「史実と違う」という意見も寄せられるという。だが中園は正確な史実を書くつもりはない。

「どんな物語であれ、主人公が誰であれ、“人間”を書きたいんです。ですからディテールが命で、いいエピソードは全部いただく。その人がその時、どう思っていたかが欲しい。その人物が有機体になってまさに立ち上がって勝手に喋ってくれるようになるまでは、書き出せないんですよ」

それにしても、素手で世の理不尽さと闘う、一匹狼のような人物像ばかりに、なぜ惹かれるのか。尋ねるとわずかに沈黙があった。

「……自分自身が逆境の連続だったからかもしれない」