主人公が誰であれ“人間”そのものを書きたい
「何でも聞いてください」
約束したレストランにやって来た中園ミホは、軽めの赤ワインを口にふくむとそう言った。たおやかな色気を持つ女性だが、目の光は強い。「嘘が苦手なので、ぶっちゃけますから」と笑う。
女の本音をセリフで語らせたら、当代随一といわれる。人気脚本家、中園が生み出すヒロインたちは、女性たちの熱い共感を呼び、次々と驚異的な視聴率を叩き出してきた。
代表作『やまとなでしこ』(フジテレビ系)で、松嶋菜々子が演じた神野桜子は、ひたすら玉の輿をめざす女性。極貧であった育ちから「お金は絶対、女を裏切らない」と言い切り、『ハケンの品格』(日本テレビ系)では、篠原涼子が扮するスーパー派遣社員、大前春子に「ハケンですが、それが何か?」と言わせた。
さらに『Doctor-X 外科医・大門未知子』(テレビ朝日系)で、米倉涼子が演じたフリーの凄腕ドクターは、大病院の上役に向かって「(雑用など一切)いたしません」と、クールに言い放つ。
中園の書くヒロインたちは、おしなべて逆境を生きている。打算家のようで実は純粋、真っ直ぐな女たちである。
「『やまとなでしこ』は最初、制作陣から、こんなヒロインで大丈夫かという声が上がりました。私自身も絶対的な自信があったわけではありません。でも放送後に大変な反響があった。この時、女たちが言えずにいる本音を、きれいごとでなく書いていいのだ、そう思いました」
『ハケンの品格』は、初めて自ら発案、企画した脚本であった。ある時、派遣社員という身の大変さを耳にした中園は、今、自分が書くべきだという思いを滾らせる。執拗に取材を重ねることでも知られる中園は、身銭を切って、毎週のように派遣で働く女性たちと飲み会をした。
「でも、なかなか本当のことを言わない。半年ほど経って、ある人がぽろっとセクハラを受けた話をしたら、皆、まるでダムが決壊するように本音を話してくれた。聞くうちに怒りがこみ上げてきてどうしようもなかったですね。立場が弱い人間だからクビを恐れて『あなたのほうが間違っている』と言えず、皆、こらえて胸に納めていた」