
概要
旬なニュースの当事者を招き、その核心に迫る報道番組「深層NEWS」。読売新聞のベテラン記者で、コメンテーターを務める飯塚恵子編集委員と、調査研究本部の伊藤也主任研究員が、番組では伝えきれなかったニュースの深層に迫る。
米国トランプ大統領の常軌を逸した言動が看過できなくなっている。国内では支持率の低下や物価の高止まり、国外では長引くイランとの交渉など、思い通りにならない課題を抱えるトランプ氏の焦りを感じさせる。国際秩序の要だった米国はどこに向かうのか。トランプ氏の度を超える言動とその背景について、番組に出演する飯塚恵子編集委員と読み解く。
トランプ苦境度を超す言動
思い通りに進まない焦り
「イランとの交渉において、トランプ氏に残された手段はあまりない。交渉に応じなければ、あるいは降参しなければ攻撃するぞと脅しをかけるしかない」=田中浩一郎氏
「今のホワイトハウスの広報が目指していることは、良くも悪くもバズることだ。『何をやっているんだ』と思われても、若者に受ければいいと考えている」=小谷哲男氏
伊藤トランプ氏のSNSへの投稿が物議を醸しています。自らをキリストに見立てた画像や、キリストが自身を抱き寄せる画像を続けて投稿しました。画像は生成AIで作成しているようです。イランへの軍事作戦を巡っても、自らが先頭に立って荒れ狂う海の中を突き進む「嵐の前の静けさ」と題する画像や、トランプ氏が英語で「Winning」、米国は勝っていると60分間ひたすら繰り返す動画を投稿しました。トランプ氏の言動はこれまでも波紋を起こしてきましたが、度を超えるようになっています。
飯塚トランプ氏の言動は日々変化して、戦略を感じさせません。内容も眉をひそめるようなものが増えています。こうした投稿が目立つようになってきている背景には、トランプ氏の焦りがあるのでしょう。国内を見ると、物価やガソリン価格はなかなか下がらず、支持率は低迷しています。国外を見ても、5月18日のゲスト、田中浩一郎・慶大教授が指摘したように、イランへの軍事作戦とその後の外交交渉は長期化してきました。「嵐の前の静けさ」の画像はイランへの威嚇、「Winning」の動画は作戦はうまくいっているという支持者へのアピールでしょうが、トランプ氏の狙い通りになっているとは思えません。
伊藤「Winning」の動画はトランプ氏のSNSではなく、ホワイトハウスのSNSに投じられました。5月8日のゲスト、小谷哲男・明海大教授が指摘したように、政権としてタガが外れてきています。悪目立ちして注目を集めるというやり方はかえって悪循環に陥ると思います。
飯塚キリストを連想させる画像はトランプ氏の熱心な支持者にも波紋を広げました。トランプ氏は福音派を中心とするキリスト教保守派の支持を受けてきました。キリストをもてあそぶような振る舞いはさすがにやり過ぎではないかという声が上がっています。また、トランプ氏はイランへの軍事作戦に批判的なローマ教皇レオ14世とも対立しました。ローマ教皇は宗教や宗派の枠を超えて敬意を払われる存在です。そこでもトランプ氏の言動に疑問を持つ人が増えています。
「Winning」の動画も、自分はイランに勝っていると思いたいトランプ氏の執着のようなものを感じます。トランプ氏を支持してきた、いわゆるMAGAの人たちは海外への軍事介入に批判的です。長引くイランへの軍事作戦で、岩盤とされる支持者を失いかねないというトランプ氏の不安がさらなる焦りを招いています。