女性嫌悪者の存在が差別を意識させた
酒井 和を乱すことを嫌う日本において、平成の30年の間にますます同調圧力が強まってきて、個人が目立つことへの躊躇が見られるようになっています。それに比べて韓国人女性はおかしいこと、嫌なことには声を上げて社会に訴える印象がありますが。
すんみ 韓国にも「出る杭は打たれる」という意味のことわざがありますし、声を上げられるようになったのも最近のことだと思います。
酒井 すんみさんが翻訳(共訳)された、『私たちにはことばが必要だ フェミニストは黙らない』(以下、『私たちには~』)には「声の上げ方」が書いてありますね。この本が出版されるきっかけになったという2016年の江南(カンナム)駅殺人事件は、女性が殺害された通り魔のような事件だったとか。
すんみ そうなんです。江南駅近くの雑居ビルにある男女共用のトイレで女性が殺害された事件で、これをきっかけに流れは変わりました。犯人はトイレで待ち伏せをしていて、何人かの男性を見過ごしたあと、女性が来たときに殺人を犯したことから、無差別殺人ではなくミソジニー(女性嫌悪)による犯罪と言われました。逮捕後、「女に無視されていた」と発言していますし。
スー 結局は女性が思い通りにならないからですよね。自分をないがしろにするから嫌いだという……。
すんみ この事件の1年ほど前に、韓国人の男子高校生が過激派組織「イスラム国」に参加したというニュースがありました。彼はツイッターに「僕はフェミニストが嫌いだ」と書いていて。その頃から女性嫌悪が認識され始め、江南駅の事件でさらに広まったという経緯があります。
スー この事件をきっかけに大きなデモが行われたと聞きました。日本では、不満があってデモを行っても、大きな流れに結びつかない。自己主張をすることが得意ではないんだろうなと思います。男女ともに。