「ITOさんから見てきれいって、その人の心がハッピーでキラキラしている状態なんですね」
「そう思います。お客様の、十九年前の自分が眩しく見えたっていうのも、えっと、お餅つきですか? そのイベントが、楽しかったから素敵な表情をされていた、ということじゃないでしょうか」
「そう……なのかもしれません」
メイクを終え、会計を行いながら、綾香はしみじみと美しいショッピングバッグに収められた真新しい化粧品を見つめた。若く見せるためでも、マイナスだとされる特徴を隠すためでもなく、ハッピーでキラキラ……私たちを苛むさまざまな潮流を受け流し、やり過ごし、心を明るく楽しく保つために、こういう品物はあるのかもしれない。ほんのひと塗りでしみから目線を外させる、美しい魔法のチークのように。
ITOさんは商品の他に、美容液や別の色合いのコンシーラーなど、たくさんのサンプルをつけてくれた。
「またメイクで困ったら寄らせてください」
綾香の声かけに、ITOさんは美しい目元を緩めて微笑んだ。
「はい、喜んで。いつでもお待ちしています」
