化粧品売り場を出た綾香は、短く立ち尽くした。

 それで――唯の心を、ハッピーでキラキラしている状態で守っていくために必要なものはなんだろう。まず社会には意図的に人を不安に陥らせて、コントロールしようとする潮流があると説明することは絶対に必要だ。無加工カメラで撮っても、ずっとずっとあなたはかわいいんだと、何回だって伝えたい。その上で、やっかいな潮流をやり過ごして生きていく方法を、一緒に見つけていけたらいい。

 ――ひとまず、子供でも使える低刺激の除毛クリームや、肌に優しいシェーバーを探してみようか。一緒に説明書を読んで、またサンドイッチをつまみながら話し合おう。

 綾香はエレベーターホールへ向かい、生活雑貨のフロアを探して壁にかけられた案内板を見上げた。

 雨の日に、唯と二人で向かい合って作業をする時間が好きだ。

 私たちが脅かされず、ずっと幸福に過ごせるよう、王国の防備を固めなければ。

 深く息を吸って、ゆっくりと吐き、綾香はエレベーターの呼び出しボタンを押した。

 

(完)

 

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