求められるルール作り

「ベネズエラでもイランでも、米軍は大量のデータをAIに分析させて、短時間で作戦計画を立てさせたという。AIを実戦でここまで活用できたことは驚くほどだった」=石井氏

「軍事作戦でデータを分析する際に求められるAIの能力は、民生向けのものとほとんど変わらない。いわゆるプラットフォーマーの技術も安全保障にかなり転用できる」=佐藤氏

伊藤徹AIの開発に合わせて、AIの実装も進んでいます。番組では、ロシアの侵略に対してウクライナがAIを利用して反撃する例を紹介しました。1200キロに及ぶ前線の膨大なデータをAIが分析して、指揮官に作戦を提言しています。また、無人機にAIを搭載することで、ドローンが容易に標的を探すことができるといいます。米国もベネズエラのマドゥロ大統領の拘束やイランへの軍事作戦で、AIを情報の分析や計画の立案に活用したと見られています。

トランプ大統領
実態 AI軍事利用で「戦争が変化」©️日本テレビ

伊藤俊人間の判断を介さず標的を識別して攻撃する兵器のシステムを、英語の頭文字をとって「LAWS」と言います。LAWSの規制について、国連の場などで議論が一時期熱心に行われていたのですが、最近は低調になっていました。そうした中で、世界各地で戦闘が行われており、事実上LAWSが使われているのではないかと懸念する声は強まっています。

ロシアがウクライナでやっていることは許されないことです。米国も国際法を時々無視しているのではないかと指摘されています。そういう状況の中で、LAWSを規制するルールを作っても本当に守られるのかといえば、佐藤さんもおっしゃった通り、悲観的にならざるを得ません。しかし、少なくともルールがなければ、そのよしあしさえも判断できません。人間の生死に関わる原則を作り、最低限のブレーキをかけることが国際社会に求められているのではないでしょうか。

伊藤徹国際秩序の揺らぎとともに戦争に対する規範も侵食されているように感じます。ルールの立て直しに本来率先して取り組むべき国は米国ですが、トランプ氏は「米国第一主義」を掲げています。そして政権に協力的な「テック右派」と呼ばれるAI企業が存在感を増しています。佐藤さんは、軍需産業とAI企業の間の垣根は低くなるだろうと指摘しました。

トランプ大統領
「AI大手8社の製品を機密システムに導入」合意を発表©️日本テレビ

伊藤俊アンソロピックはAIの安全性や倫理を重視する姿勢から、米国防総省と対立しており、そうした事情も今回提供停止を命じられた背景にあったとされます。ルール作りが現実に追いつかない中で、開発に携わる企業の意識も問われています。

トランプ大統領
米軍のAI軍事利用©️日本テレビ

日本は年内に安全保障3文書を改定する予定で、自衛隊へのAI活用が議論されています。最後は人間が責任を取るとして、どういう場面でどういう使い方をするのか。防衛のあり方として、海外のAIに過度な依存はできませんので、国産のAIも必要になるのではないか。様々な課題があり、議論を深めてほしいと思います。

解説者のプロフィール
伊藤俊行 読売新聞編集委員

伊藤俊行/いとう・としゆき
読売新聞編集委員

1964年生まれ。東京都出身。早稲田大学第一文学部卒業。1988年読売新聞社入社。ワシントン特派員、国際部長、政治部長などを経て現職。

 

伊藤徹也 調査研究本部主任研究員

伊藤徹也/いとう・てつや
調査研究本部主任研究員

広島県出身。京都大学総合人間学部国際文化学科卒業。1998年読売新聞社入社。浦和支局、政治部次長などを経て現職

 
 

提供:読売新聞