ここは海底?
会場内に足を踏み入れると「コポコポ……」と海底を彷彿させる水中音が聴こえる。ああ、そうだ。アリエル(演:谷原志音)がエリック王子(演:武藤洸次)と出会う前は、父のトリトン王(演:金久烈)ら、姉妹たちと海底で暮らしていたじゃないか……と開演前から漂ってくる物語におばさんうっとり。気分は人魚、と言ってしまうとあまりにも大仰で失礼すぎるので、気分は海草or藻。先述した『舞浜アンフィシアター』は海底の会場にしっくりきていた。
さてネタバレにならない程度の本編について触れると、『リトルマーメイド』の演目は女性なら誰もが幼少期に読んだであろう『人魚姫』の世界。
「あんなに素敵な世界、私も行ってみたい……!」(アリエル)
人間界に興味津々の美しい歌声を持つアリエルが、エリック王子と恋に落ちた。周囲の反対を受けながらも王子と結ばれたいと願い、果敢かつ大胆に行動する様子をたっぷりと魅せられる。
上演約2時間20分を終えて、改めて私が気になった箇所を振り返ろう。まずは誰もが感じたであろう「演技の気迫」。海底シーンでは浮いている設定なので、アリエルらはほぼ(上部から吊られつつ)下半身をなめらかに揺らしている。この状態でセリフを放ち、とんでもない迫力で歌声を披露するのだから、もうアスリートと同等の体力を使っているはず。しなやかな筋肉に包まれた人魚たちの体を見ながら、普段からどれほどのトレーニングを一意専心しているのかと感心してしまう。毎日10回程度の腹筋さえも「めんどくさい」とサボっている自分を恥じ、俳優たちに「申し訳ない」と心で詫びる。
以前、テレビ番組で劇団四季の厳しさを見たが、この舞台は多くの試練を勝ち抜いてきた俳優たちによる、競い合いの場であるかもしれない。また同じ舞台に立てる保証はないのだから、この場で披露する演技が明日の自分に影響する。日々自分をどれほど鼓舞しているのだろうと、息を呑む。
