山野海さん
8月28日から全国の映画館で公開が始まった映画『平行と垂直』。SUPER EIGHT・安田章大さんと俳優・のんさんが、自閉スペクトラム症(ASD)の兄と、カウンセラーとして働きながら兄を支える妹を演じます。同作で原案・脚本を担当したのがテレビや舞台でバイプレーヤーとして活躍する俳優の山野海さんです。山野さんは60代を前に、夫や親族を立て続けに亡くしますが、俳優や執筆が活力になっていると言います(取材・文:婦人公論.jp編集部、撮影:本社 奥西義和)

LINEの既読がつかない

結婚して20年以上たつ夫とは、亡くなる3年ほど前から別居していたんです。喧嘩をして別れたとか、どちらかが浮気がしたとかではなく、生活のズレみたいなものがあって。それでも連絡は取り合っていました。

ところがある時、夫のLINEの既読がつかなくなった。「どうしたんだろう」と思って、たまたまドラマの撮影が夕方前に終わった日に、夫が住んでいた蒲田のマンションに行くことにしたんです。

夫の自宅に着くと、部屋の明かりがついていました。「なんだ、いるのか。心配して来ちゃったじゃん」と思いながら合鍵でドアを開けると、ガリガリに痩せた飼い犬が出てきた。そして家の中に入ると、夫が倒れていたんです。

倒れている夫を見た時は、私は「キャー!」とは声が出ませんでした。その日はドラマの撮影をしていたので、とっさに「大きい声を出したら、音声さんに怒られる」と思ってしまって。でもすぐ「あ、もうマイクないんだった」と我に返りました。予期せぬ出来事を前に、なぜか冷静になってしまったんです。