『風、薫る』場面写真
(『風、薫る』/(c)NHK)
明治時代を舞台にトレインドナース2人の人生を描いてきた連続テレビ小説『風、薫る』。主人公の一ノ瀬りんを見上愛さん(25)、大家直美を上坂樹里さん(21)が演じている。看護師という職業の確立に貢献した大関和と鈴木雅をモチーフにしたバディドラマ。原案は田中ひかるの『明治のナイチンゲール 大関和物語』(中央公論新社刊)。派出看護のために「恵風看護婦会」を立ち上げた直美。孤児というつらい境遇を乗り越え、陸軍の軍人・小川吾郎と結婚。長男・明を授かるも幸せな日々は続かず、日清戦争に出征した吾郎は明に会うことなく帰らぬ人となった。戦争をきっかけに皮肉にも看護婦の存在感が高まるなか、悪質な派出看護が広まってしまい、「看護の質」の問題に向き合うことに。クライマックスが近づくなか、上坂さんに作品やキャラクターへの思いを聞いた。(取材・文・婦人公論.jp編集部)

吾郎の結末を知って苦しんだ

つい最近、『風、薫る』をご覧の方から、SNSのコメントで「りんちゃんや直美ちゃんの頑張っている姿を見て、訪問看護の道に進むことにしました」と教えていただきました。さらに、直美と吾郎さんが子供を授かったタイミングで、その方も婚約されたそうです。ドラマを視聴していただいたこともうれしいですし、『風、薫る』がきっかけになれたということはすごく幸せなことだと感じました。

<息子の明を出産し吾郎の帰りを待つ直美のもとに、陸軍の兵士がやってくる。吾郎の戦死を告げ、ボタンの取れた軍服を遺品だと渡して去っていった。呆然とする直美。後日、広島の陸軍予備病院で吾郎を看取った多江(生田絵梨花)が直美に会いに来る。多江が直美に渡したのは吾郎の形見のボタン。吾郎の軍服のボタンはよく外れてしまい、直美が文句を言いながら付け直していたが、実は、直美がボタンを付け直すところを見たかった吾郎が自分で外していたことが明かされた。一ノ瀬家から自宅に戻った直美が、吾郎のボタンをつけながら号泣するシーンが印象的だった>

吾郎さんとの短くも幸せな新婚生活が終わってしまい、直美が明をりんに預けて1人で自宅に戻り、吾郎さんの軍服にボタンを付け直すシーンは演じていても苦しかったです。吾郎さんとの生活は、順番に1~2週間で撮影しました。台本は先まで完成しているので、展開がわかっている状態で幸せな生活のシーンを撮りました。なので、吾郎さんがご飯を作ってくれたり、2人で何気ない会話をしたりしているシーンの撮影が余計につらくて。

台本上、直美は吾郎さんが亡くなっても気丈にふるまおうとして、最後になってようやく我慢していたものがあふれ出てしまうという流れ。どうしても直美と気持ちが重なってしまうので、撮影期間中は涙を流さないようにすることに苦労しました。

『風、薫る』場面写真
(『風、薫る』/(c)NHK)

直美にとって、吾郎さんはいちばん愛した人。自分の強さも弱さも教えてくれた、そんな大切な人が亡くなってしまったことは受け入れがたかったです。直美がボタンを付ける姿を見たいから外していたというのも、吾郎さんらしくてずるいな、と思いました。でも、直美はそんなところを好きになった。2人らしい最後だったと思っています。