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9月11日に最終回を迎えた蒼井優さん主演のドラマ『Tシャツが乾くまで』(TBS系)。脚本の生方美久さんらしい、印象的な会話劇だけではなく、視聴者の予想を裏切る展開の連続に、SNSで話題になった。放送コラムニストの高堀冬彦氏が解説する。

TBSの金曜ドラマ『Tシャツが乾くまで』は、離婚や非婚が一般的な選択肢となった世相を色濃く反映したホームドラマだった。

最終回、過去に4回の離婚を重ねた主人公の瀬尾咲子(蒼井優)は、5度目の結婚相手だった夫の充(松山ケンイチ)との離婚に踏み切った。自分にとって心地よいパートナーとの在り方に、ようやく気付いたからだ。それは、相手を1人に限定せず、さらに一定の距離を保つというものである。

咲子は充にこう告げた。

「戸籍が別でも、一緒に暮らしてなくても、会うのは週1でも月1でもいい。お互いに居心地がよく、ちょうどいい距離感でいられる人とだけ一緒にいる」

咲子はこのあと、「充ともそうなりたい」と付け加えた。別離のときにありがちな社交辞令ではない。ラストシーンで咲子宅を訪れた客は、充にほかならない。咲子が料理に充の苦手なカボチャを入れなかったことから分かる。「あっ、きょうはこれいらないや」。声が弾んでいた。

もう1人、咲子が同じ関係になろうとしている男性がいる。説明するまでもなく、園田樹生(中島歩)である。充が1年間にわたって失踪していた間に、親しくなった。

樹生が5歳児の息子・翔(久保田薫)を連れて遊びに来た際、咲子は率直に語り合える関係を続けることを笑顔で約束している。

咲子が離婚を重ね、最後にこのような関係を選んだのは、過干渉な母親・順子(島本須美)の影響であることは疑いようがない。このドラマがユニークだったのは、咲子だけでなく、ほかの主要登場人物3人の生育歴も描き込んだことだ。咲子、充、樹生、その妻のあずさ(夏帆)である。

誰でも生い立ちの思い出はずっと消えない。引きずる人も珍しくない。それでいて、ドラマではまず描かれない。新しい視点だった。また、この複雑な作品を読み解くためには、生い立ちが欠かせなかった。

咲子は順子から盲愛され、過干渉を受けた。咲子が子供のころ、順子は友人の選別まで行なった。咲子はそれに反発し、干渉しない夫を捜し求めたのだろう。理想の家族である。親も夫も家族だが、夫は自分で探せる。

だが、失敗を重ねた。心地よい風通しを保ってくれる相手が、なかなか見つからなかったようだ。やっと探し当てたはずの充は失踪。置き去りにされてしまった。