身近な人を大切にしてこそ

清水 いまの小籔さんはすごく充実して見えるね。ドラムの練習も楽しいでしょう。

小籔 楽しいですけど、つらくて苦しい、もあります。ほかのメンバーに迷惑をかけたくないから、ここ2年はあんまり飲みに行かなくなりましたね。

川谷 バンド組んだばかりの頃は2日連続で飲みに行ったりしてたのに(笑)。小籔さん、スタジオ用の部屋も借りてて、朝7時から練習してたりするんですよ。

小籔 「まじめですね」なんて言ってくださる方もいますけど、大河ドラマの話がきたら、誰だってその時代のイントネーションとか、必死に練習しますよね。同じです。

清水 本業じゃないから余計にね。

小籔 川谷Pは僕らに合わせて、楽曲のレベルを少し落としてくれてるとは思いますけど、本当に難しい。ただ、一所懸命練習すれば、それまで全然できへんかったことがだんだんラクにできるようになる。この年齢でそういう実感を得られるのは楽しいですね。

川谷 僕は4、5年前、週刊誌やテレビで叩かれたのを境に生活が大きく変わって。たとえば仕事の現場で挨拶するじゃないですか。それだけで「いい人ですね」とか言われるんです。

清水 私は川谷さんにそんな印象も持たずにマネしてたけど(笑)、世間はそんなものなのかなあ。

小籔 あの時期、しばらくテレビは見んとこう、と思ったんですって。半年以上経ってもう大丈夫だろうとテレビをつけたら、まだ自分の話が出てて驚いたらしいです。

川谷 一番つらいのは、僕の音楽を聴くのはダサいと思われることでしたね。ただ「イメージが悪いから聴いてもらえない」ことがわかった以上は、接地面を増やせばいい。仕事は断らなくなりました。

清水「ジェニーハイ」で、接地面は増えた感じがする?

川谷 大きかったです。小籔さんたちから入って、「いい曲だな」と思ったら実は僕が作ってた、で全然いい。僕の名前、ツイッターの検索ワードに入れると、「川谷絵音 くやしい」がめっちゃ出てくるんですよ。

小籔 「いい曲だから誰が作ってるのかを見たら、川谷Pだった。くやしい」ってことらしいです。

川谷 バラエティも、ドラマもやってみようと思いました。曲もいろいろな人に作って。「まずは聴いてもらう」ことにこの2年間はやっきになっていた気がします。それに小籔さんとバンドを組んだことで、かなり人間が丸くなったんだと思います。こないだもサカナクションの山口一郎さんから、「顔つきが穏やかになったね」って言われて。以前の僕は、平気でツイッター上で戦っちゃったりしてました。それが「ああ、文句ばっかり言ってちゃいけない」って自然に思えるようになったんです。