1982年、玉川学園小学部父母会のあとで。ひばりさん45歳、和也さん11歳(写真提供:ひばりプロダクション)

おふくろの歌を次代に受け継ぐために

おかげさまで私は奇跡的に命を救っていただき、仕事に復帰することもできました。酒量も減らし、体調に気を配っています。

昨年は『NHK紅白歌合戦』で「AI美空ひばり」が登場し、大きな話題となりました。もちろん、賛否両論あったと思います。

もともとあれは、紅白のために作ったわけではありません。NHKの技術の方からAIの可能性に挑戦してみないかとお話をいただいて始まったプロジェクトで、2019年9月に『NHKスペシャル AIでよみがえる美空ひばり』という番組で結実しました。

おふくろは、新しいものにはすべてチャレンジしたい、という精神の持ち主でした。たとえば私が小さい頃は、一人で寝るのが寂しい息子のために、自分の童話の読み聞かせをカセットデッキで録音して置いておいてくれたり、その時々の最新技術をプライベートでも取り入れていた。

仕事先の楽屋などでアニメが始まったら、僕のためにテレビの前にカセットデッキを置いて録音してくれたこともあります。音だけだと、なかなかわからないんですけどね。(笑)

今回は、私自身も最新の技術であるAIの可能性に興味があったので、お話に乗った次第です。ただし完成映像を事前には確認しないで、生放送でファンの方々と一緒に初めて観たい、というのが、制作側へのお願いでした。

もし「えっ、これ?」みたいなものだったらどうしよう、という不安もありましたよ。でも、たとえどうであれ、その時に自分から出てくる感情がすべてだと思って。結果、気がついたらみっともないくらいに号泣していました。過去の映像はいつも観ていますが、あの映像は、おふくろが今生きてそこにいて、語りかけてもらったような気がして……。AIに抵抗がある方もいるでしょうが、新たな可能性を見た気がしました。