YouTubeで美空ひばりを発信?

最近は若いミュージシャンが楽曲をカバーしたり、映画の挿入曲として使ってくださったり。アンテナの鋭い方たちが、けっこう興味を持ってくれているようです。

思い起こせば僕も若い頃、大友克洋さんの劇画が原作の『AKIRA』映画版で、笠置シヅ子さんの「買物ブギー」が流れて――「知らない曲だけど、なんだこれ、かっこいい!」と思った覚えがあります。

そこから調べて、笠置シヅ子さんの存在を知り、上野のガード下にある昭和歌謡のカセットなどを扱っているお店まで買いに行きました。自分にもそんな経験があるので、まだまだ可能性がある。

昭和という時代のよさを若い人たちに伝えるのが、たぶん新しいファンの方を獲得していくには一番いい方法なのではと思っています。

DJとして国内外で活躍している中学時代の友だちも、最近「おふくろさんのSPレコードないの?」と聞いてきました。そのままプレーヤーでかけると若い人たちにも受けるそうで、「いいものはいいんだよ」と。その彼の言葉がうれしかったですね。魂が入っている本当にすぐれた芸能は、時代が変わっても風化しないんだと実感しました。

歌は時代の記憶でもあるから、消えてしまってはもったいない。たとえば「東京キッド」なんか、戦災孤児の歌ですから。今の若い方は、戦災孤児なんて知らないでしょうね。なにせ「もぐりたくなりゃ、マンホール」ですよ(笑)。

でも、聞くことが知ることにもつながる。想像力も養われ、人にやさしくなれたりもします。仕事でモンゴルを訪れた際、いまだにマンホールチルドレンがいることに驚き、おふくろの歌を身近に感じましたね。

私が相続したもののうち一番大きなものは、昭和を代表する歌手であった美空ひばりの歌であり、実績だと思っています。いわば、美空ひばりの存在そのものです。受け継いだからには、次世代に「美空ひばり」を伝えていくのが私の役目。これからはYouTubeチャンネルなど、さまざまな方法で美空ひばりを発信していきたい。そのために、とにかく踏ん張れるだけ踏ん張るつもりです。