「視野が1.3倍」
ベルリンでの暮らしは小栗さんの視野を広げたという。「視野が1.3倍くらいに広がりました。日本の常識が世界の常識じゃないということが身に染みてわかって」
ドイツはヨーロッパの中でも勤勉で真面目なイメージがあったが電車は遅れるし、運休してもアナウンスがなかったという。「役所や学童にタトゥーが入っている人がいたのも驚きました。ドイツは終業時間も早いので、夏は午後の5時にはすでにビアガーデンに人がたくさんいる。学校の先生は、授業が終わったと思ったら生徒より早く飛び出す人もいました。肩の力を抜いても社会って回るんだなと思いましたね」と懐かしむ。
夫婦関係にも変化があった。「お互いを頼るしかなくなるので、関係はよくなりました」と振り返る。トニーさんは、トニーニョ君の学校行事に積極的に参加した。「トニーが息子にとって良い人間関係をぐんぐん広げてくれたんです」。小栗さんは、家事と漫画の仕事で手一杯なところ、トニーさんが子育てや役所関係などの手続きを一手に引き受けてくれたのもあったという。
「ベルリンという新鮮な環境で、日本にいたころよりトニーと話す時間も増えました。トニーは、物理学者から映画監督まで幅広い職種の人に出会うようになって、話を聞いていても面白かったですね」
小栗さんは、ベルリンで漫画を描いて、夏の一時帰国時に次作のための取材をして作品を発表、という生活スタイルに。その後、2019年2月にベルリン生活を終え、日本に戻ってきた。「親が高齢になってきたこともありましたし、もともと永住する気はなかったので、いろいろな事情が重なって。日本はきっちりしているし、治安がいい。でも、地震の心配だけはありました」と話す。
