消化できていないだけだった
「胃と腸が動いていないだけ。ただの食べすぎで、難病でもなんでもないよ。いまから3日間、食事を抜いてみて」
触診を終えた先生の言葉には、目が点になりました。だって私、沖縄でもほとんど食べてなかったんですから。でも先生は首を振り、「体に溜め込んでいるものを、まずは出しなさい」と繰り返します。
断食中は3日間、先生のもとに通い、胃酸過多にならないよう、鍼を全身に打ってもらいました。1日目には早くも胃と腸が動き出す感覚があり、何も食べていないのに、2日目には真っ黒でねっとりとした宿便のようなものが大量に出ました。そして3日目に感じたのは、背中に羽が生えたかのような体の軽さ。嘘みたいな話ですが、腹痛はもちろん、頭痛や肩こりなど慢性的に抱えていた症状が見事に消えてしまったのです。
戸惑う私に、先生はこう言いました。「現代は食文化が発達して、おいしいものがいつでもどこでも食べられる。でもそれを消化する人間の体は、まだ進化に追いついていないんだよ」。
この言葉は、当時23歳だった私にもストンと腑に落ちました。炭水化物を吸収する機能を取り戻すため、1年半はお米や小麦粉を使ったパン・麺類の摂取を控え、何十回もよく噛んで食べるようにしたら、悩みの種だった吹き出物がなくなって。好きでたまらなかったファストフードは、食べたいとすら思わなくなりました。「食」は体だけでなく、脳にも影響を与えるんだな、とビックリでした。
食後から寝るまでに、最低3時間はあける。これはいまも忠実に守っていて、たとえ睡眠時間が少なくなっても、「3時間あける」ことを優先しています。そして夕食から朝食まで、18時間おく。こうして、寝ている間に胃腸をちゃんと休ませるんです。
体調が悪いと、仕事に取り組む時は精一杯「こなす」という感じになりますが、仕事に楽しさを見出すことができたのも、この頃からです。また、せっかく食養生についてこんなに深く考えたのだから、と「マクロビオティックセラピスト」「薬膳インストラクター」「中国漢方ライフアドバイザー」の資格も取りました。
ただこの3つ、勉強していると矛盾も見えてくるんです。たとえば、「マクロビオティック」では基本的に動物性たんぱく質を一切摂らないのですが、「薬膳」ではがっつり。熊だって食べちゃう(笑)。また「漢方」でも、動物由来のものを処方します。
相反する考え方を同時に勉強したことで、結局は「自分に合うものは何か」を常に自分に問う姿勢が大切であると気づきました。それこそが、自分の体をいたわる食養生の第一歩ではないのか。つまり、「この方法でなくてはいけない」と決めつけることなく、まずはひとつひとつ実践していこう、と思ったのです。