性愛に関する相談も、彼にならできる
コロナ禍で3月半ばから都市封鎖(ロックダウン)が始まったその日に、彼は電話を掛けてきた。 「『年配の人は危ないんだから、外に出るのも、ハグも絶対ダメだよ』って。年寄り扱いしないでって感じでしたが(笑)、大事に思ってくれているのは伝わりました」
ホセさんがパートナーとの関係に悩んだときには、何度もじっくり話を聞き、アドバイスめいたことも伝えた。逆にナツミさんが現地男性にアプローチされて困っているとき、彼にはためらうことなく相談できた。
「これまでも男友達はいたけれど、結局は恋愛感情を持たれてしまって続かなかったんです。その点、彼が私に恋愛感情を抱くことはない。それに、性愛に関する話だと、男性と女性どちらの気持ちも理解できるホセはとても頼れる存在です。彼はゲイだけど、私にとっては、あくまで“異性の友人”ですね」
現在、観光の仕事は全面的にストップしている。一方、ホセさんはナツミさんの紹介で始めた、オンラインでダンスを教える仕事が軌道に乗ってきた。新しいスタイルで生き残らなくてはと、ナツミさんも孫たちといっしょにユーチューバーデビューするべく戦略を練っている。
「私はこの地に骨を埋める覚悟ですが、ホセには私の育った東京を見せたいですね。それが今のところの最後の夢かな」
リモート取材の画面越しに、ナツミさんが華やかに微笑んだ。
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気が合う男友達を見つけるのは難しいが、親しい仲を続けていくのも難しい。私の友人たちからは、「深刻な悩みを言い合ううちに疎遠になった」「家族ぐるみで仲よくしていたが、配偶者が病没した途端に警戒されて、距離を置かれた」などの話を聞いた。
今回登場した4人には共通することがある。友人である男性に深い敬意を抱いていること、そして、夫や子どもたちもその関係を認めていることだ。それが長続きする理由なのかもしれない。