「『映画なんてあとまわしだ』と言われるなかでも、映画の人間たちは、やっぱり映画が好きで、何とかして作品をつくろうとしている。その想いも伝えたかった。」(行定さん)

行定 自分でやってみて配信の強みを感じたのは、その“即時性”です。今、起こっていることを映画にできますし、観客も「観たい」ときにすぐに観ることができる。それも、たくさんの人が、です。

重松 さらに『劇場』は、世界同時配信ですよね。

行定 242ヵ国です。この作品は又吉直樹さんの小説が原作で、小劇団に関わる男女の恋愛を描いています。東京の下北沢という演劇の街の物語をコンゴの少年が観て、わかるかなあ。「ジーンときた」なんて言われたら嬉しいけれど。(笑)

小泉 ドラマ『おしん』が中東であれだけ人気だったのだし、ありえるかも。

重松 ただ、監督にとって配信はあくまでも次善の策ですよね? やっぱり映画は大きなスクリーンで観てもらいたいのでは?

行定 もちろん、それが第一です。僕としては、配信を映画館の今後につなげたい思いもありました。

重松 手応えはいかがですか?

行定 配信もやっているのに、「スクリーンで観たくて、映画館に行きました」「観たあと、ゆっくり歩いて帰りたいと思った」という声をたくさんもらいました。

重松 再開した映画館で久々に映画を観たお客さんの喜びの声、嬉しいですね。

行定 「配信が進めば映画館がなくなる」という考えもありますが、映画館に観に行こうという意思を明確に持っている人がたくさんいることを今回の取り組みでも知ることができました。「なくならないと思うよ」というのが僕の実感です。

重松 映画館は「密」のイメージが強いけれど、今はそうならない工夫がされているとか。

小泉 自治体の基準などが見直されましたし、換気の実証実験もしています。

行定 館内にスモークを充満させ、空気の流れを可視化してみると、20分ごとに空気はすべて入れ替わっているんです。