「予定したものはできなくても、何かやるべきなのじゃないか。劇場という場があれば、発信できるものはあるはず。そう考え、急遽、別の企画を立てるべく、今、動いているところです。」(小泉さん)(撮影:木村直軌)
10月1日から東京・本多劇場で「asatte FORCE」を展開する小泉今日子さん。
もともと予定していた公演は新型コロナウイルスの影響で無期限延期となりましたが、「今できることを発信したい」との思いから急遽企画したそうです。
そんな小泉さんが、4月の緊急事態宣言下でリモート映画をつくり配信した映画監督の行定勲さんと、7月末に語り合いました。ウィズコロナ時代、映画・演劇の作り手たちの思いは――。
司会は小説家の重松清さん。現在発売中の『婦人公論』10月13日号の掲載記事を、WEBでも公開します(構成=福永妙子 撮影=木村直軌)

新作映画をネット配信してみたら

重松 本日(7月30日)の時点で、長く休館を余儀なくされた映画館は再開され、中止が相次いだ舞台公演も徐々に上演されるようになってきています。とはいえ、取り巻く状況は“コロナ以前”とはまったく違って厳しい。そうしたなか、行定監督は思い切ったアクションを起こされました。

7月17日、新作映画『劇場』を、封切りと同日にAmazonプライム・ビデオでも配信。映画作品のDVD化やネット配信は公開から時間をおくのが業界の常識と聞きますから、同時配信は異例ですよね。

小泉 私は8月28日公開の映画『ソワレ』(外山文治監督・豊原功補プロデュース)にアソシエイトプロデューサーとして参加しているのですが、『劇場』の同時配信を知ったとき、豊原さんと「行定さん、ついにやるんだ」と話してたんですよ。

行定 『劇場』はもともと4月17日の公開予定だったのが、コロナの影響で延期。当初、配信という考えはまったくありませんでした。ただ、この作品は280スクリーンでの上映が決まっていて、お金もかけています。僕は、使った資金を映画館でリクープ(資金回収)することを自分に課し、それを次の作品制作につなげることを信条としてきました。

けれども、映画をお客さんに観てもらえるかわからない状況では、リクープどころじゃない。「どうすりゃいいの?」と悩みました。そんなとき、配信の話が出てきたのです。それでまず、配信というものを知りたいと、自粛期間中の俳優たちに声をかけ、2つのリモート映画をつくってネット配信したんです。

重松 ショートムービーの『きょうのできごと a day in the home』(4月24日よりYou Tubeで期間限定公開。現在はHuluにて配信中)『いまだったら言える気がする』(5月17日・同)ですね。出演者がリモート会議ツールのZoomを使ってオンラインで集まり、それ自体を映画にする……。僕も拝見しました。

行定 「映画なんてあとまわしだ」と言われるなかでも、映画の人間たちは、やっぱり映画が好きで、何とかして作品をつくろうとしている。その想いも伝えたかった。

小泉 コロナ禍の今だからこそ、つくりたい、届けたいという気持ち、すごくよくわかります。