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コロナ禍で特に甚大な影響を被ったのは、非正規労働者や自営業者だろう。職場の都合で仕事がなくなったり、営業自粛を求められたりして、収入がなくなった人が大勢いる。彼らはその日々をどう生きてきたのか。生活者のリアルな声を取材した

しだいに心も病んでお店に立てなくなり……

「コロナの打撃はすごいです。もう、ありえないぐらい。以前は、1日に30人のお客様が来てくださる日もあって、この19年間、赤字を経験したことは一度もなかった。でもコロナ以降、お客様は2割に減りました」

そう話すのは、東京・新宿区舟町で和風バー「おかまい」を営むゲイのJunさん(62歳)。もとはファッションデザイナーだったが、アパレル業界の景気低迷を機に飲食業に転身。19年前に同店をオープンすると、たちまち人気店に成長した。Junさんの軽妙なトークと手料理に惹かれて、遠方から足を運ぶ人もいるほどだ。

「コロナ騒ぎが大きくなるまでは、夜8時から夜中の2時まで営業していました。雲行きが怪しくなってきたのは2月半ば頃。そして、3月半ばぐらいからいよいよおかしいなと。このお店は、私にとって自分の娘や息子のようなもの。子どもを守るため、3月1日からは掛け持ちで仕事をしました」

大事なお店を潰すわけにはいかない。その一心で、Junさんは、ホテルの朝食バイキングでアルバイトを始めた。バーの仕事が終わると、一睡もしないまま始発の電車に乗り、ホテルへ。午前10時まで勤務し、帰宅後に5時間ほど睡眠を取ると、再びバーへ。この過酷な生活を1ヵ月間続けた。

「緊急事態宣言が出たあと、ホテルが朝食バイキングの営業自粛を決めたんです。なので再び、お店一本の生活に。ほかの仕事を探してもよかったけど、いつか体が壊れると感じて……。この頃は心も痛んでいたので、お店にどうしても立てないこともありました。1名でも来てくださるのであれば、這ってでも行かないといけないのだけど、気持ちがついていかなくて。もともと、あまりビビったりしない性格だけど、今回は初めて、死んだらどんなに楽だろう、と思いました」