生ビールの樽を2ヵ月買えなかった

お店にかかる費用と、自宅の家賃や生活費を合わせると、1ヵ月で相当な金額になる。業績が不振になってからは、酒代の支払いを約3ヵ月間滞納した。飲食店経営という職業柄、現金を少しでも手元に残しておくため、食材はクレジットカードで購入したという。

「生ビールの樽を、2ヵ月買えなかったの。あれはさすがにみじめだった。だって、バーなのに生ビールを出せないのよ? お客様が、自分で缶ビールを持ち込んで来店してくださっていました」

5月からは、東京都の要請を受け、時間を短縮して営業。そして、国からの持続化給付金100万円と、都からの感染拡大防止協力金50万円を受給した。しかし、滞納していた分の支払いを済ませると、150万円はすぐになくなった。

「今は夜7時から午前1時まで営業しています。営業時間を再び夜10時までに短縮すれば、都から新たに感染拡大防止協力金を20万円もらえるのだけど、今回は申請していません。20万円というのは、とてもありがたいお金。でも、飲食業では、20万円なんてあっという間になくなるんです。正直、鼻くそみたいなものよ。そのあたりのことを、国や都にはわかってほしい。それ相応の保障をしてほしい。わずかな保障で営業自粛を呼びかけるなんて、生殺しです」

Junさんを応援する常連客は数多い。その証拠に、現在、来店客は以前の5割ほどまで戻ってきているという。来年の6月、「おかまい」は創業20周年を迎える。そのときは、お店が盛大に盛り上がることを祈るばかりだ。


《ルポ》ステイホームで生活一変
【1】休校で非常勤講師の妻は無給に。受験生2人の塾代が捻出できず…
【2】自粛期間中に「契約満了」。30年間培った販売職の実績も評価されず
【3】バーのお客が2割まで激減。早朝バイトとの掛け持ちを始めるも
【4】イベント中止で夫は開店休業状態。6人1匹の大家族を支えるのは