倍賞 夜も「おやすみ」ってLINEを送らないと、なんだか不安になってきちゃう今日この頃。

吉永 日常が止まってしまったなかで親しい人に伝えたいことって、意外と些細なことなんだよね。

倍賞 散歩の途中で買った花や、見つけた雑草の写真を送ったり、そんなどうでもいいようなこと。会話感覚でやりとりできるし、LINEを始めておいてよかった。

吉永 ある意味、今は非常時でしょう。非常時というのは、思いがけずいろいろなことが浮き彫りになる。この世に存在してくれているだけでありがたい人なんだと、改めて感じたよ。バカみたいな話でも、この人と共有したいなって思うから。

旅行で訪れた台湾でポーズをとる二人(写真提供:倍賞さん)

倍賞 そういえば私、これまでの人生で、浜辺で本を読んだことってなかったの。水着になったらすぐに海に入りたいタイプだから。だからみっちゃんがパラソルの下で本読んでいるのを見て……。

吉永 怪訝な顔をしてたよね。そんなふうに旅先で一緒に笑ったことや一緒にあきれ返ったこと、すべてが思い出になってる。そういう思い出をひとつひとつ共有していくと、共通の土壌がどんどん豊かになっていく。

倍賞 だから、旅に行けないのはつらい。本当にコロナが、いろいろなことを変えてしまったね。

吉永 映画や芝居、コンサートに行くとか、生きる楽しみもすべてリスクになってしまった。こんなこと初めてだよ。

倍賞 人生の締めくくりの時期に、そういう生き方をよしとしなければならないなんて。

吉永 友達に会うことですらリスクならば、万一相手が感染していて、その結果自分にうつってもかまわないと思える人は誰だろう。逆にもし私が感染していたとしたら、絶対にうつしたくないのは、何があっても生きていてほしい人。するとその両者が一致してしまうわけだから、葛藤しちゃうよ。

倍賞 どれだけ気をつけていても、感染することはあるかもしれない。だから私は、気をつけて生活したうえで、防げなかったらその時は仕方がないとわりきる覚悟はある。そうでないと、人間としての生き方が失われてしまうもの。人間は切ったら血も出るし、しゃべりたいし、聞きたいし、歌うだろうし、踊るだろうし。そうして表現できるのが人間だと思うから。

吉永 命の次に大事なものは何なのか、問われているよね。私は独り者だし、千恵さんの存在を常に感じている。だから、私より長生きしてね。

倍賞 やだなあ。私のほうが年上だよ?

吉永 千恵さんがいないこの世は寂しいから。お願いだから、長生きして! 一緒にいい後半生を送ろうよ。