10年来の仲という、倍賞千恵子さん(左)と吉永みち子さん(右)(撮影:清水朝子)
倍賞千恵子さんと吉永みち子さんは60代で意気投合して以来、10年来の仲。グループ旅行を楽しんだり、北海道にある倍賞さんの家で語り合ったりしています。「同じ景色を見て、同じことを考える」友達に思うことは。後編は倍賞さんが吉永さんをしつこく誘ったことから……(構成=篠藤ゆり 撮影=清水朝子)

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出会いがあるから自分を確認できる

吉永 私は小脳に問題があるせいで平衡感覚が取りにくくて、ちょっとでも雪があると転んでしまう……。だから、千恵さんが住んでいても、冬の北海道には一生行かないと思っていたの。

倍賞 でも私、しつこく誘ったのよね。

吉永 真っ白な世界を見せたいって(笑)。靴にスポッとはめられるアイゼンを探して、思い切って行くことにしたわけです。千恵さんの友達で私も仲良しになった地元の警察官が、私のアテンドのために有給休暇まで取ってくれて。雪景色を目の当たりにした時は、本当に感動したのよ。強引に誘ってくれなかったら、あんな美しい風景を見ることは一生なかったと思う。えがった、えがった。(笑)

倍賞 以来、夏も冬も遊びに来てくれるようになったのよね。

吉永 10年の時を経て、私にとって千恵さんは今や、何も話さずに隣にいても平気な人。北海道で一緒に夕日を見ながら2時間くらい黙ったまま、とか……。

倍賞 そんなこともあったね。つきあい始めの頃って、沈黙が気になって無理してしゃべるようなところがあるけれど、だんだん黙っていてもいいんだな、と。

吉永 年齢や職業を飛び越えてそんなふうに自然にいられる関係って、なかなかないものなんだよね。家族っぽい関係というか……。

倍賞 私はわりと、親しくなると入り込みすぎるところがあるけれど、みっちゃんはそれも受け入れてくれる。

吉永 私は人に甘えるのが下手なんだけど、千恵さんには甘えちゃう。素直でいられて、互いを尊重し合える得難い関係が作れたのは、人生後半にさしかかった60代で出会ったからかもしれないね。若い頃に出会っていたら、こうはならなかった気がする。

倍賞 私の場合、若い頃は映画の仕事が忙しくて、友達づきあいをする暇もなかったもの。