出会いがあるから自分を確認できる
吉永 私は小脳に問題があるせいで平衡感覚が取りにくくて、ちょっとでも雪があると転んでしまう……。だから、千恵さんが住んでいても、冬の北海道には一生行かないと思っていたの。
倍賞 でも私、しつこく誘ったのよね。
吉永 真っ白な世界を見せたいって(笑)。靴にスポッとはめられるアイゼンを探して、思い切って行くことにしたわけです。千恵さんの友達で私も仲良しになった地元の警察官が、私のアテンドのために有給休暇まで取ってくれて。雪景色を目の当たりにした時は、本当に感動したのよ。強引に誘ってくれなかったら、あんな美しい風景を見ることは一生なかったと思う。えがった、えがった。(笑)
倍賞 以来、夏も冬も遊びに来てくれるようになったのよね。
吉永 10年の時を経て、私にとって千恵さんは今や、何も話さずに隣にいても平気な人。北海道で一緒に夕日を見ながら2時間くらい黙ったまま、とか……。
倍賞 そんなこともあったね。つきあい始めの頃って、沈黙が気になって無理してしゃべるようなところがあるけれど、だんだん黙っていてもいいんだな、と。
吉永 年齢や職業を飛び越えてそんなふうに自然にいられる関係って、なかなかないものなんだよね。家族っぽい関係というか……。
倍賞 私はわりと、親しくなると入り込みすぎるところがあるけれど、みっちゃんはそれも受け入れてくれる。
吉永 私は人に甘えるのが下手なんだけど、千恵さんには甘えちゃう。素直でいられて、互いを尊重し合える得難い関係が作れたのは、人生後半にさしかかった60代で出会ったからかもしれないね。若い頃に出会っていたら、こうはならなかった気がする。
倍賞 私の場合、若い頃は映画の仕事が忙しくて、友達づきあいをする暇もなかったもの。