「がんばっても、活躍できるのはあと10年。その10年間に何をしたら、みんなに『楽しい』『よかった』と思ってもらえるのか。」(キャシーさん/撮影:藤澤靖子)
ともに大切な家族を見送った経験のあるキャシー中島さんと残間里江子さん。悲しみの淵にあっても、残された側の毎日は続きます。いかにして気持ちを立て直したのか、また、死に直面したことで、その後の生き方はどう変化したのか、語り合いました。後編は「身じまい」の準備の話からーー(構成=篠藤ゆり 撮影=藤澤靖子)

〈前編よりつづく

何を残して何を処分するか

キャシー いろいろな方の死に接するなかで、私が亡くなったらどうなるのかということも、そろそろシミュレーションしなければ、と思っています。

残間 それは私もよく思います。新型コロナウイルスの影響で、人はいつ死んでもおかしくないという気持ちが強まったし。リビングウィル(延命治療に関する意思表示)の書き方も取り寄せました。

キャシー 私は夫より先に死にたいの。

残間 どうしてですか? 女性は漠然と、夫のほうが先に亡くなると思っている人が多いのに。

キャシー 私がいたからこそ幸せだったと、家族みんなに実感してほしいと思っているから。

残間 なるほど。(笑)

キャシー 身じまいの準備として、2年くらい前に4トントラック2台分、今年の2月にも大々的にモノを処分しました。七奈美の写真も、すごくきれいに撮れているものや家族と一緒に写っているものを除いて、去年処分したんですよ。

残間 それはなぜですか?

キャシー 私や勝野が亡くなった後、次女や長男が大好きだったお姉ちゃんの写真を泣きながら整理することを考えると、かわいそうだなと思って。私と勝野の写真も、半分くらい処分しました。

残間 私も後に残される息子のことを考え、写真や手紙など思い出の品を処分しました。でも、少しぐらいはいいだろうと思って、熱海に小さなマンションがあるのですが、そこに息子あてにメモリアルボックスを置いてあったんです。小さい頃に描いた絵とか、作文、成績表や手紙などを、順番を考えて編集して。

シニカルな息子も、私が亡き後あれを見たら少しは涙を流すだろうな、と(笑)。ところが泊まりに来た友人が棚からその箱を落として、順番がぐちゃぐちゃに……。整理し直す気力が萎えてしまいました。

キャシー 順番がおかしくても、息子さん、じ~んとくるわよ。

残間 う~ん、おそらくあっさり捨てるような気がします。そういえば結婚されて2年後に、静岡の御殿場に家を建てて引っ越されましたよね。あの家は、今もまだあるんですね。